お医者様は、患者様の診察をおこない、その診断結果に基づいて処置やお薬の処方箋を書いて手渡します。薬膳師は、お客様の体調や精神状態を中医学の四診という診察方法の結果に基づいて弁証し、薬膳レシピを書いて手渡します。そうした薬膳レシピを、薬膳の処方箋というと歯切れよく申されていました。中国では中医師は専門大学があり国家資格です。十分な研究と実績を身に着けてきた先生方が書かれた薬膳の処方は処方箋といっても過言ではない効能が約束されている。そこは十二分にうなづける話です。
現状の私のそれは四診の力不足により薬膳の処方箋とは、口が裂けてもいえませんが、いずれは実力を積んで山を超え、そう自分でも言えるし、お客様からもそう感じていただけるようになれたらうれしいと感じる次第です。
Amazon Kindle版にある石川晶三先生著書となる『脈診から漢方エキス剤』『漢方エキス剤をつかう西洋医によんでほしいこと』などを読ませていただければ、医師が漢方エキス剤を使って治療をなさっておられる臨床上の流れがうかがえます。用いる漢方エキス剤に対し試行錯誤をもってよりふさわしい処方箋の精度をだしていかれる様子から、初手の処方で完璧ではないが適切にそこを目指して知識や知恵をもってたどり着かれる姿が伺えます。薬膳の処方箋も、初手で完璧であろう場合ばかりではなく、レシピ通りを試していただいて体質や証の気血津液の表裏・寒熱・虚実の軽重や病のある臓腑の状態などを探索していくことだと考えられます。基本的に薬膳をもって治病を目的とする方は日本では圧倒的少数派でしょうから、証の重い方がお見えになられる可能性は現実的にはあまりないと推測いたしております。
私の想定では、がん症の方が、食が細り飲食物を摂取しづらくなるときがあり、そういった際は、胃腸に重たすぎることのない食薬を使い調理法により味付けや食材の刻みや火入れ等での工夫をしたレシピがあります。そういった書籍は日本ではあまり出版物の数は少ないですが中国では版を重ねて磨かれた中医学に則った本がありますから。そうした情報を適切に収集し、求めに応じて指導するのは薬膳師の仕事のひとつと言えるのかも知れません。ちなみに中国語のがん症レシピ本では胃癌、大腸がん、子宮がん、肺がん、リンパ腺がんその他といった各がん症ごとに、それぞれのがんに適した調理法や食材などが解説してありました。ただ私がもっている本は写真一切無しの実用一辺倒の数百ページの単行本で、調理技術がないと、この調理法はと質問をされたら窮するだろうと不安があるため、調理師免許をもつ技術者がそういったところをカバーできればなによりと期待するばかりです。。
個人的に私の母が末期膵臓がんで他界する2ヶ月前から食がとれずに点滴剤での栄養補給で命を繋いでおりました。ただ母が死して直後に、口から多量の水分がとめどもなくあふれでてきて、2時間ほど給水シートでその水を吸い続けていたことを覚えています。黄疸が観られ肝および胆の不調から胆汁による胃の初期消化がおこないづらくなっていたと思います。キャロットジュースのような液状のものなら摂れていましたが、腸を活性するような性質がある食材が入ると大いに苦しむ状態。そのため治療用のお薬は一切入っていない栄養補給目的の点滴剤を多量に取り続けるしかないと考えていました。医師の勧めでそうしますか?と問われたとき、母も私も、点滴剤が水分量を多く体内に取り入れるため、体内に多量の湿が停滞して、陸にいながら肺が水浸しになり苦しむことになるとは考えていなかったのです。我慢強い母が、涙してそれを含めて苦しんでいた姿は忘れられません。当時に、膵臓がんの場合に推奨される食材や調理法等を解説した中国語の本があると知っていたら、そうしたページを参考にしてみたり、またはそうした薬膳レシピを書いていただける専門家がいたら、お願いしたかったと後悔するところです。
そうしたどん底の後悔を体験した事柄から、人は学ぶ機会を得て道を開くものと考えています。
それもあって、Amazonや亜東書店等の中国語の中医学書が手に入るところにいけば、ついつい高くても財布の紐を緩めてしまいます。。。。。
すいません、横道にそれましたので、話を元に戻しますね。
ただがん症などの重い症状に耐えられている患者様は専門医のもとで治療を受けるのが先ですし、日本では大補元気な朝鮮人参や腎を補強する枸杞子や脾を助けるなつめなどの食材にももちいられる中薬を使ったら薬膳だという認識されることが多いでしょう。私も20年前は薬膳のことを誤解して、そうしたレストランを数軒はしごしてみて『これ、一日だけ取っても意味なくない?』と言って、勉強課題に足らないと切り捨てた一人でした。
そしていま、ボディチェックで顔をお見せいただいたお客様から薬膳をやっているんですねとお声がけをいただくと、そのきっかけから『○○さまは、薬膳のイメージってどんなものでしょうか。よかったら具体的にお教えいただければ、とても参考になりますのでお願いします』と。
するとおよそ半分のお客様は薬膳の五味五性等の食による効能などを知り、日頃から健康の維持に努めるようにしている様子が伺えました。一部の同業者の方には、更に突っ込んだ話で、『もし薬膳師が処方としてあなたに書かれたレシピを手渡されたとします。どういった重みを、そこから感じられるでしょうか』という問いに対し、あまり重みは感じられないといった率直な反応が返ってまいります。おおよそ東洋医学系の国試免許をもっておられる鍼灸師の友達からも、そのような回答を得て、やっぱり、そういった印象で止まっていたという現実を目の当たりにする気持ちでした。
でも、それもそのはず。
自身の証を弁証されて食により対処法を知らされ指導を受け、
その延長線上で食で体質改善に取り組みを実際にトライしなければ効く効かないという薬膳による実感を伴った判定ができるものではありませんから。
そうした体験知がない状態で『薬膳はすばらしい!』と笑顔でいわれたとしても、この人はおべんちゃらを言って私の気を落とさないよう気遣っていただけたのだろうとしか思わないでしょう。
そんなことを思考すれば、実際に各人への食薬を通じた対処経験を私と関わる人とともにしていただけるような機会が必要だと痛感いたすところ。現状の私の力量では、弁証論治の精度は不十分であっても食の禁忌と特定中薬のチェック、そして八綱弁証上の寒熱と虚実のチェックをしっかりすることで一定の危険性が落とせますし、未病の浅い状態位置におられる主に虚証の方に限定した対処のみ受けていくように心がける。そのうえで『あなたの体質を中医学の四診で観させていただいたうえでの改善はこうなりました』という薬膳レシピを手渡し実践していただいて、体験レポートや要望や苦情の聴取を集める取り組みをする。そうした薬膳取り組みのうえで体験した方々が増えることで、変えられる意識もあろうかと思います。
そうやっていくうちに、自分で書いた薬膳レシピを薬膳処方箋といえそうと感じるときがあるのかもしれません。
いまのところは、1年間かけて自分や身内が副作用でつぶれないよう慎重に食薬や中薬・方剤を決めていきつつ安定感を少しずつ増していく取り組みをしているところで、対外的に薬膳レシピを書いて手渡すことはいたしかねる段です。ですが、ひとつのマイルストーンとして本草薬膳学院の通信教育課程を終えて中医薬膳師の認定書を交付されたときには、近しい友達関係に対し試行錯誤を重ねて様子る過程を経て、徐々に広げて試させていただきたいと考えております。
もし一般の方が薬膳を自分の身で試したい方がでてきてくれたら、そうした方には包み隠さず成果や失敗をお伝えするつもりですので、そのうえで興味ありという方が少しでもでてきてくれたらよろこばし限りです。
ただ・・・私の場合、虚実挟雑と呼ばれそうな筋や腱の凝りや身体構造上の歪みからでたミスアライメントなどは手技で得意な箇所であるため、そこの実証はある程度手技対処を並行したいと思いますから、純粋な薬膳のみという感じではなくなるということは、先にお伝えさせていただきたいと思います。手技で実証を軽減させて薬膳で気虚や血虚などの気血津液が足らない構成物を補っていきたいという考え方です。
そのような目論見を持っております。
■ 追加加筆:2026年7月3日
○ 『薬膳処方または処方箋』という医療行為を医師以外のものがおこなってはならないという医師法との兼ね合いがあります。
そのため医師ではない私が公然とこのようなことを一般の方や第三者の前で述べることは、法的に処罰対象となると心得ております。
それゆえに対外的に処方箋といった表現を使用する考えはございませんし紛らわしくなるため使うべきではないと私は考えています。
ただ私ども薬膳を勉強するものの人格や人となりまたは資格などを信用し、期待を込めていただいた方に対しての責任があります。そして十二分に勉強をして研鑽してご提示させていただいた誇りにかけて、本気の気持ちを込めた言葉に出せないがそうであるべきと情熱を込めた表現が薬膳処方です。
おそらく中国の中医薬膳師は、中国国家資格で認定された中医学大学修了証をもっておられますから、彼らが中国で薬膳処方と申されるのはなんら問題がないものと推察いたします。
ということですから、対外的に実際にお客様を眼の前にする際は、薬膳処方や処方箋といった表現はおこなわず、薬膳レシピといわせていただきます。
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