2026年06月25日

施術を受けるだけではカバーしづらい気血の足りない気虚や血虚他の証との兼ね合いから、食薬をあわせ用いるアイデアが活かされること

病証も平和な健常状態に近い未病と呼ばれる軽証から、それを経過して正気が衰退し邪気が勢力を増してしまう重証があります。未病では西洋医学による検査を実施すれば検査結果の数値は正常またはグレーゾーンだが、重証ではグレーゾーンまたは病の診断がくだされることが多くなります。


私が手技療法にて筋膜リリースを適宜おこなわせていただいたとき。
昨今というより、30年前のこと。
60代以降のお客様は1割。20代以上〜40代未満が6割、40代以上〜60代未満が3割。
私は当時、今のよな中医学による病証の移り変わりについて知識はございませんでした。
手技療法の本やセミナーばかりで学び続けたときに、中医学的な勉強過程は入っていなかったのです。



ときおりお客様が初診の際、私に告げられる言葉があります。
『身体に不調を感じはするが、さほどどこがどう悪いかはわからない。とりあえず来てみました。』
記入いただいた問診表には、いくつかの気になっておられる項目がチェックされています。ですがそれがもとで来たわけではなくて、なんとなくシャキッとしなくてとおっしゃられます。触診でチェックをすればわかりますが、皮下の直下は血が正常量より少ないため津液による浮腫から冷たさが伝わってきます。そして深層の筋肉状態を観れば細く緊張し骨膜に張り付く多層化した筋組織があります。

実はこの言葉を伝えてくれた方は、決まって複雑で難解なお身体の症状が隠れていました。非常に苦戦しながら考え抜いて対応して、どうにかほふく前進を続けて状態の底上げをしなければなりません。おおよそ痛覚神経麻痺と呼べるほど、神経に営養を配る余裕がないほどの生命エネルギーが擦り切れてしまった方の場合が非常に多いのです。なかには武道をなさられひたすら身体操縦の方法を極めているという方を除いて、これからの施術は山あり谷ありの体調とこころが揺れるなかを二人三脚で歩むことになります。私が会話力を高めて対応できるタイプであればいいものの、そこが苦手な方ですから余計に大変な長期戦となります。そうです、その施術で関わる辛さの半分は私の勇気づけや適切な情報提供が不十分なため起きるものでした。それを改めるため年単位でコーチングスクールに通って、修行をさせていただいたほどです。


そうしたお客様も、施術の回数を重ねていくと、私が触って認識できるお客様の皮下の筋肉や血液の循環の状態、温かさ等に、かつてとはあきらかな差を感じ始めます。すると以前は血瘀が関節ごとに取り巻き血管を圧迫して血の停滞を招いておりましたが、そうした部位を丁寧に手技で徹底解放していくことで、血の営養が行き届かなかった体の芯や奥まで運べるようになったからだと考えていました。すると本来、筋肉を取り巻く筋膜の癒着の正体が血瘀の関わる部位がほとんどでしたが痛覚神経麻痺状態のため、『鈴木さん、別に痛くないから大丈夫よ』とおっしゃられていた言葉が変わり、『鈴木さん、ちょっと待て!一息つく時間が欲しい!!』と変わってきます。これが施術上の一里塚を越えた印です。お客様には、痛みが感じられるようになって筋膜の癒着を剥がされるという刺痛がつらいものだと体感する恐怖が現れましたが、そんな時期に私が質問をします。『最近、だいぶん体力がついてきたんじゃないですか?』と。すると『そうなんですよ〜。土日祝の休みは平日の仕事疲れを補うため、寝て暮らさないと持たなかったんですけど、いまは平気に出歩けてるんです。』と返ってきます。


これで終わりかというと、そうならない方もおられるのです。経験上、この方は急にエネルギー切れのような眠さ、だるさ、疲れを感じる峠をわたることになる。そうなる方かどうか、私にはわかります。それがいえる観測点もいくつかあるのですが、ここでは専門的になりすぎるため控えますが、こうした眠さやだるさは半端じゃないものなのです。ある方は、上野でお友だちと約束をして山手線に乗って座った瞬間眠りに落ちたそうです。それでも通常、目的地に付けば自然に気づいて降りれるはずだったものが、ぐるぐると電車は回り続けていたようで待ち合わせ時間を大幅に過ぎたとか、他にもそうしたエピソードをいくつも耳にします。
ただこれからは重要な案件の仕事だと気合が入ったときだけ脳には十分な血流が届くかのよう。それで重要だとその方が認識していることには対処する脳のスイッチが入るが、さほど重要でもないと思える案件では体を休めたいモードが先行します。
こうした体調状態は、ある人は一週間で、ある人は一ヶ月で、ある人は半年間、ある方は一年も。
そして当時、若い働き盛りの人がお客様に多かったからか、だるだるな状態を抜け出たとき、以前から考えてきたやりたかったが今までの体力気力ではむりだったが今ならいけると決意して、『鈴木さん、転職しました!』とおっしゃられる方が、やけに多く感じました。私自身、どうして安定する今の職を急に手放されるのかが腑に落ちないときなどは、もしや施術で体力が増したための一時的に勇者になって突っ走りだしたんじゃないか!?と考えまして。それ以来、そろそろこのお客様は転職とか口に出されそうな体のほどかれ方だなと察すれば、先手を打って、『○○さん、転職とかなさるときはよくよく考えてなさられる方だと存じ上げておりますが、そこをもう一押し、熟考してみましょうね』と、転職活動してそうな方に不遜な釘打ちをしたりしていました。ここまでくれば施術は卒業です。定期的に来る必要もありません。もし急性のなんらかな身体トラブルでもあっても、お近くの通いやすい整骨院や整体等で問題ありません。ただそうなっても、定期的に自身のコンディションを維持するためにお通いいただけるお客様もおられます。
そうしたお客様に支えられ活動し続けてこれたと感謝をいたしております。





では、こうした痛覚神経麻痺にまで至った方の流れを中医学的な虚実の証の伝変で観れば、どうなるのでしょうか。

おおよそのところですが、当てはめてみました。

@ 施術初回:
『重い虚実挟雑状態』

筋膜の癒着が、関節周り、筋肉同士、筋肉と骨膜、靭帯との癒着など体中に点在しておられます。筋膜の癒着を叶える糊代は血瘀か痰湿の痰です。血瘀の部位はトリガーポイント上に多く散布し、それらは癒着のリリースをされる際に激しい刺痛が感じられ、圧すれば拒按部として抵抗したくなる状態です。
ただ刺痛を感じ取れないほど気血が足りない痛覚神経麻痺が起きています。血の量が極端に足らなくなっていた場合、神経は多量に血を必要とするため他の組織の維持の二の次とされます。
状態悪化が進行していたため、麻痺による無痛。
こうした虚証が強く正気が足りずに気血の流れが滞りだすと、水量が少ない川は川底に泥や汚れが沈殿量が増えて汚濁するように、血の流れが足らなくなれば血瘀という血液を構成する成分が血が特に流れが遅くなるような部位に沈殿して粘稠しだし、ざっくり言えば筋膜の癒着と化していきます。血液の流れが滞ることで生成された血瘀がある状態を瘀血証と呼び、こちらは実証に当たります。


A 繰り返しの施術で実証となる筋膜の癒着を丁寧に取り除いていく:
『改善がみられた虚実挟雑状態』

血瘀が血脈の血の流れを停滞させる病理物質ですが、そこを痛みがないよといわれるおかげで、すっすと過剰とまではならない限度を見計らいつつ取り除きます。すると血流を阻害した血瘀が減少し、血の流れのスムースさが増していきます。それにより全身の血の循環が以前よりも楽になりました。以前は、いくつもできた血瘀により流れが停滞した先の組織にまで、是が非でも血を送り出そうと心気をすり減らし循環に宗気のエネルギーを割いてきました。それが少しずつですが着々と心臓のポンプにかける過剰といえた負荷を下げてもやっていけるようになります。
すると、少しずつ停滞した血が組織の末端まで循環をはじめます。すると痛覚神経麻痺した痛覚神経に血が届き酸素と営養が渡されたとき、痛みを感じ始めることになります。
痛みが感じ取れるようになって、施術者はホッとする。お客様は、痛くなかったところが痛くなって、壊されたんじゃないかと心配しつつ。ですが血の循環による体力の向上を実感しているゆえに、痛いからといって施術を受けるのを辞めるべきか続けて改善をし続けるか、選択を迷われる時期です。


B ふいに強烈なだるさや眠気がつづく:
『実証となる血瘀が減少することで虚証に振れた状態』

いままでの不調は虚証と同時に混在する実証の強さに押されてきました。交感神経を高ぶらせるかの作用を持つ実証により、虚証の不調が抑制され隠れていたと推察されます。
そうした実証の勢力が弱まりだすことで実証と虚証のバランスが虚証を認識できるように振れたと思われる時期です。
以前は、私自身、こうした強いだるさや眠気は、後に好転に転じることを多くのお客様からみておりますため、一種の好転に必要な安静を要する時期とだけ考えておりました。それは一見すればうなづけるものの、なぜ、Aさんは1週間で変わり体とこころとやる気が出るのか。Bさんはそうなるのに1年もかかってしまったのか。そうした理由を、明確に説明することがかないませんでした。Aさんのような短期で変わる方ばかりならありがたいですが、それは武術・スポーツ・バレエをしている方やかつてスイミングで体を作ったといった一握りの方です。多くの方が数ヶ月単位から三ヶ月単位はかかりました。少数派ですが半年〜一年と着地まで期間を要した方もおられます。

いまの私は、なぜこのだるさや眠気がでるのかについて、気虚、陽虚、血虚、陰虚、気血両虚のいずれかに該当し、その病証の状態の軽重により、だるさが抜ける期間が比例するのではないかと考えています。
仮にそうであったとすれば、実証を箇所を除去するに特別な速攻や力を持つ手技の頼りが、まだ必要な箇所があるかと思いますが、そこだけで対処することで十分ではない方がでてまいります。
気虚、陽虚、血虚、陰虚、気血両虚は、それぞれ違った体質です。
気虚なら足りない気を補う必要があり、気虚が重くなった陽虚ならさらに丁寧に気を補う必要があります。
血虚なら足りないため血を補う必要があり、血虚がさらに重くなった陰虚ではさらに丁寧に血や津液を補う必要が出てきます。
気血両虚なら、気や血ともに足らない体質ですから、足らないそれぞれの量を推し量り対処する必要がでてまいります。

つまり、こうした気虚証や血虚証なども強い病証であれば、心身や精神が安定するまで足らない気血が補われたことを契機に、その方が健康で生活しやすい本来の健康状態を取り戻せるのではないか。そのように考えております。
そして気血の足らない体質を改善するすべとして手技で徹底しても、限界がある。そもそも不通則痛を収まるのは得手としている手技も、足らない気血を増やすのは苦手ですしそこを手技でやろうというのは効率が悪い。薬膳を勉強して気づいたのは、足らない気血を補うのはこちらが手技より得意だということです。

ちなみに私はかなり前から熊野庵さんという同業から脈診の手ほどきをうけており、脈状の虚実や平和をみて施術をしてまいりました。だからだるさから脱出した方が虚証の脈状から平らに変わったところを確認しております。そこからも虚証・実証から転じて病証がおさまることが施術卒業の試金石と感じていました。ただ、私としてはこちらのお客様は卒業で月1とかでお見えになる必要がありませんといいかけたとき、すかさずお客様から、それじゃまたお願いしますとおっしゃられることが多々ありました。それは私がこれでいいという基準が甘かったに過ぎないことであったと、次回にリリースをしたときこんなにリリース箇所が奥に残っていたのかと気付かされて思い知ります。お客様のほうが、自身の内側でひっかかる不調和を鋭敏に感じ取られており、まだ伸びしろがあると直感しておられるのでしょう。(施術者としては、内心、顔を見せていただけるおなじみになったお客様とのお別れと感じて、うれしいやら悲しいやらという気分のときなのですが。。。ざっくり、お客様から『鈴木さん、まだ、甘いよ。先を見て考えてよ』と教育的指導を受けて、呆然とする心持ちです)


C 慢性により作られてきた虚証がおさまり平和な健康が手に入り、そこから凝りを造るとどうなるか。
『急性による実証状態です。痛みがはんぱありません』

実際、かつて強い虚証から痛覚神経麻痺となり、そこを抜けて痛覚神経が作動し始めて刺痛となる血瘀を緩められたとき。痛みを実感する時期です。ただこのとき感じられる痛みのレベルは人それぞれではありますが、10段階で言えば、5くらい。平和な健康状態では酸欠ぎみで痛覚神経の作動が減じられていた弱い警報音とは似つかわしくない警報がけたたましく鳴り出します。10段階で言えば、10を越えると言えるくらいにきびしい痛みに驚きます。拒按とわかっておりますから、当然、強い圧をかけることはしません。ただ急性でこさえた筋膜の癒着を剥がす操作で、10グラムほどのずり圧を指先で軽くかけただけでも信じられないほど痛いんです。
実際、お客様ご自身が予想打にしていなかったこうした痛みを感じたとき。
私どもが姿勢が大事で、凝りを作らないような運動操作にこころを向けるのも大事と、お経のように繰り返し、同じような所作を手を返しなお変え続けざまに伝えて、いままでの所作を変えるような情報を提供してきた理由がわかるときです。
また今回ほどの痛みを感じるのはやってられないとばかり、身体操作磨きに真面目に乗り出される方が増えるきっかけとなりました。
ただボウエンテクニックを学んだあとは、ボウエンテクニックの痛みがほとんど感じることもない手技でも姿勢の崩れからきた純粋な急性の実証の凝りなら緩められたようになりました。
それにより、ぜがひにでも身体操作を正さねばというモチベーションが上がらないのは困ったところですが、お客様の身になれば、ほどほどここちよい施術へと改善できた工夫ができた成果でもあります。






以上、気づけばつい、つらつらと悪い癖で書き出してしまいました。申し訳ございません。
改めてお客様の体質を見ていき虚実挟雑等だとわかった時点で、薬膳による食薬により対応するべき部分もみえてきます。特に軽い虚証や実証以外の方には、だるかったり眠くなるといった状態の期間が短くなり安定しやすくなります。また同時に慢性の虚証であれば、臓腑弁証でわかるような特定の臓腑がネックになる傾向があったり、そこからわかる帰経の改善などがわかってまいれば、自己の生活をより安定化させる運転術がわかってまいります。そうした朗報ともなるでしょう。



【虚証 → 虚証+実証=虚実挟雑 → 虚実挟雑-実証=虚証 → 平和な健康状態】
posted by スズキ at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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