2026年05月30日

五十肩は瘀血の塊だけの問題? いえいえ、痰湿の病理物質の存在が影にあるようなんです

手技をし中医学の勉強が進んでいなかった一年前では、五十肩や四十肩は、肩や肩甲骨、そして胸の周囲や首の内部にて瘀血が蓄積するものかと考えていました。



中医学における「瘀血(おけつ)」を単なる概念としてではなく、具体的な「物質(実体)」として捉え直すことは、臨床において非常に重要です。
瘀血を現代の解剖生理学的な視点とすり合わせながら、その形状、水分量、構成要素、そして血管や筋肉との関係について紐解いていきます。

1. 瘀血の「物質」としての正体(構成・水分量・形状)
瘀血は、単純な「古い血」ではなく、「流動性を失い、局所に滞留した変質的な血液およびその周辺環境」の総称です。

* 何がまとまっているのか(構成要素):
主成分は、互いにくっつき合って連銭状(数珠つなぎ)になった赤血球、血液を凝固させるフィブリン(線維素)、そして回収されずに蓄積した発痛物質や老廃物(乳酸、ブラジキニンなど)です。酸素を失った還元ヘモグロビンが多く含まれるため、色は暗紫色から黒ずんだ色を呈します。

* 水分量はどうか:
正常な血液に比べて圧倒的に水分量が少なく、粘稠度(ネバネバ度)が高い状態です。血流が滞ると、血管内圧の変化により血液中の水分(血漿成分)が血管の外(間質組織)へと漏れ出します。そのため、血管内に残った血液は水分を失ってドロドロのヘドロ状になります。

* 具体的な形状:
微小なレベルでは「泥状・ヘドロ状の流動物」や「微小血栓(小さな塊)」です。これが皮下組織で大規模に起これば「内出血(紫斑・血腫)」となり、触れるとゴリゴリとした「しこり(硬結)」としての形状を持ちます。


2. 血管との関係(絡脈における渋滞と変性)
中医学において、瘀血が最も生じやすいのは「絡脈(らくみゃく)」と呼ばれる、現代でいう微小循環(毛細血管や細静脈)の領域です。
* 血管壁へのこびりつき:
水分を失ってドロドロになった瘀血は、血管の内皮細胞に摩擦を起こし、こびりつきます。これは単なるパイプの詰まりではなく、血管の内壁そのものに炎症を起こし、血管の柔軟性を奪います。

* 漏出による「痰」の生成:
瘀血によって血管が詰まると、行き場を失った水分が血管外に漏れ出します。この漏れ出た不要な水分が、中医学でいう「痰濁(たんだく)」の正体の一つです。つまり、血管の中で「瘀血」が形成されると、同時に血管の外周で「痰」が形成されやすくなり、これが「痰瘀互結」の物理的な基盤となります。


3. 筋肉との関係(酸欠、癒着、そして硬結)
筋肉や骨格系へのアプローチを行う際、瘀血は「筋膜の癒着」や「筋硬結」として直接的に指先で感知できるターゲットになります。
* 筋肉の酸欠とスパズム(攣縮):
筋肉がスムーズに収縮・弛緩するためには、毛細血管からの絶え間ない酸素とATP(エネルギー)の供給が必要です。瘀血によって微小循環が阻害されると、筋繊維は酸欠状態に陥り、弛緩できずに持続的に収縮したままになります。これが「コリ」や「スパズム」です。

* 筋膜・組織間の接着剤化:
筋肉と筋肉の間(滑走面)には、本来スムーズな動きを助ける潤いがあります。しかし、局所に瘀血が生じ、そこから漏れ出た水分が「痰(ネバネバした病的産物)」に変わると、組織間で接着剤のように働き、強力な筋膜の癒着を引き起こします。

* 不通則痛(刺すような痛み):
筋肉内に瘀血(老廃物や発痛物質の塊)が滞留し続けると、神経を直接刺激し、チクチク、ズキズキとしたピンポイントの鋭い痛み(刺痛)を生じさせます。夜間に悪化しやすいのは、活動量が減り、さらに血流(気による推動作用)が低下するためです。



このように見ると、瘀血は単なる「血の滞り」ではなく、「水分の偏在による脱水と、それに伴う組織の癒着・硬化プロセス」そのものであると言えます。
構造的なアライメントの崩れ(関節のズレや筋肉の偏った緊張)がある部位には、必ずと言っていいほどこの物理的な「瘀血」が形成されています。日々の臨床のなかで、特に「ここには瘀血(あるいは痰瘀互結)が強く形成されているな」と指先で触知することができております。そして硬化度が高い脇のしたや関節の隙間に作られた瘀血のボールや楔の数々は、施術者の手で触られることで、お客さまご自身も、そこにできていたつきたてのお餅のような軟部組織とはいえないものの存在を感じ取れるでしょう。そこに瘀血として組織形成が進んだ結果があらわれています。



強烈な刺痛も五十肩では起こるのは、こうした凝りが不通則痛と上で説明した経絡の内部を通る気の流れを通さなくした結果です。


ですが肩甲骨周囲にある粘稠な病理物質は、自から挙手すると特定のやり方で強い痛みがでつつも、初期段階では動くことは可能です。それがしばらくそうした動きづらい状態が続けいたとき。

無理やりでも理学療法士の先生の手で挙手動作を付けて動かされては、そのうち動けるようになります。または整体院で、他動的に腕を操作されて動かしていただくことも有効です。


経絡を不通にしたため刺痛が起きていたが、動きにより血の代謝が起こり、再び経絡内を気が通る。すると脳に送っていた、刺痛という警報をだす役目が済んで痛みがきえるのです。


そういった流れは一年前にも私自身、理解して手技をおこなっております。
ですが中医学を学ぶ過程で、これは単純に瘀血のみの問題により生成したトラブルではないことがわかってきました。先行して瘀血が溜まるものの、あるものは他者による施術を受けなくても五十肩は数日で癒えて動かせるようになります。これはそのものの安静や自主リハビリで血の代謝不良が改善され不通則痛による影響が避けられた形かもしれません。血の代謝は心臓の血を押し出し進める力によります。低迷した心の気が改善して回復をはかることもあります。瘀血の量もそれで溶ける範囲内だったという好機をえた状態だったわけです。(瘀血の塊が親指の先より大きくなった場合、自力での復旧は諦めたほうが苦しみが軽減し軽快へと向かうでしょう。瘀血の塊を挟んだ関節を、むちゃして可動させると、その周囲の組織にも破損が広がり内出血を呼び、内出血は即、瘀血箇所に組み込まれます。そうならないようになさるのが賢明でしょう。)



ただこれは脇の下に形成された瘀血の塊についてのみにフォーカスを当てたに過ぎなかったのだろうと、中医学で痰湿の影響が理解できてしっくりきました。つまり肩甲骨と肋骨の間には肩甲下筋があり、肩甲骨と肋骨は前鋸筋でつながります。肩甲骨の動作は狭く偏り固定される傾向があるものの、瘀血により強力な接着剤で接合されてはいない動きを示しています。瘀血の塊の度合いが弱いからというより、別の性質を持った接着剤が肩甲骨の下に作用していると考えれば合点がいきます。つまり痰湿という瘀血とは別物の病理物質がそこに浸潤して肩甲骨が浮いてさっさと動く操作をさせてくれていない。そのような仮定をして中医学上の五十肩を調べると、やはり痰湿がそこに深く絡んでいると書かれている状態です。


瘀血は位置が正確に固定された生成物ですから、手技療法によって主だった触診可能な筋肉に形成されたものは対応可能です。凝りが強烈だったものが、丁寧かつ緻密に計算された血や気の流れを呼び込み修正をなすためのリリースを加えれば、急性であればみるみるまに消し去ることもできる。


瘀血体質がメインの方であれば、瘀血の塊を解いたリリースが精緻であり、失われた呼吸や胸郭内の心臓への圧により与えられた血脈中の血の流れの改善をも設計対処すれば、一応のこれで大丈夫ですよという言葉を送ることができます。つまり物理的に血を送り出すときの心臓の気の力が不足しているか、血管が圧迫されて血の流れが滞って循環不良が起きるか。またはその両者が同時に生じない限り、大きめな瘀血の塊はできない仕組みになっております。ゆえに脇下に大きな瘀血の塊があれば心臓の不調はすでにあるものと考えて、その不調を軽減させるための計算を組み入れて手技はおこなわれます。



(ただ時間が60分以下と短ければ患部の可動をつける定型の局所対応ですませることになります。その場合は局所の痛みが主たる患部ですが、客分となり患部として形成が進んだ血の循環に関わる心臓と呼吸に関わる肺の制約を放置する対処になります。個人的に、構造体の不調が具現化されたトラブルの発生には、主と客の2つにわかれた日の目を見る実感なされやすいトラブルとその影に痛みの形成をつくりだしている源が隠れていることがあると観ております。通常、主のみの対応をするのみの仕事をすることになれると、客となる主を起こす発生原因をみない先生になりやすいといえるでしょう。中医学を学ぶ過程でわかったのは、客となる主を生む源の追求が徹底され言語化が進んでなされていたことに驚きました)



対して痰湿と呼ばれる津液といった水分が加熱されてさらさらからべとべとに変質したものは、遊走性があるといわれ、場所を変えて存在し続ける性質があります。つまりは手技療法で圧をかけて痰により生じた可動制限を解いたとしても、痰は脇に逃げて存在し続けています。
となれば痰湿体質の傾向が強く現れている方は、手技療法上の発痛物質を出す患部のリリースだけでは、五十肩が回復した状況が半年しか持たずに繰り返される恐れがでてきます。痰湿体質を改善する、手技療法とは別立ての対処対応がなさることが良策となるでしょう。





最後に、痰や瘀血のイメージがわかりやすくなるよう、次のお話を送らせていただきます。


「心臓の拍動は、体の中を流れる『穏やかな小川』のようなものです。
本来、水が豊かで勢いよく流れているときは、川底もきれいで、サラサラと心地よい音を立てて流れていますよね。

​でも、雨が降らずに『水を押し流す力(気)』が弱まってしまうと、どうなるでしょうか。流れがゆっくりになり、川底には次第に『ドロドロとした泥(痰)』が溜まり始めます。そして、そこに流れてきた『古い落ち葉や小枝(瘀血)』が引っかかってしまうんです。
​最初は少し引っかかるだけですが、時間が経つと、その泥と小枝がギュッと絡み合って、『硬いダムのような塊』になってしまいます。


​すると、水はその塊にせき止められ、無理やり乗り越えようとして『ドプン、バシャッ』と不規則に波打ったり、流れが途切れたりします。これが、今お体で起きている不整脈のサインなんです。だから、まずはこの絡み合った塊を少しずつほどいて、再び水がサラサラと流れる力を取り戻していくことが大切なんです。」

posted by スズキ at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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