仙骨(Sacrum)は「仙人」の骨と書く通り、人体の土台であり、重心制御の要所です。
1. 「重心の不安定化」のメカニズム
構造的連鎖: 仙骨の傾斜や捻れは、脊柱全体のS字カーブを歪めます。これにより、頭蓋骨の基底部(環椎後頭関節)にまでその歪みが波及し、平衡感覚を司る前庭機能や頚部の固有受容器に誤情報を与えます。
足腰のぐらつき: 仙骨がずれることで、骨盤底筋群や深層外旋六筋の筋緊張バランスが崩れます。これは、「気虚」による筋肉の栄養不足と重なると、より顕著な「足腰の無力感・ぐらつき」として現れます。
解説:人体は大人でも水分6割でできており、3歳児なら8割が水です。
水の中に、臓器が浮き、筋肉が浮き、骨が浮き、組織全体が浮力で支えられておれば自然に身体は緩みだすようできております。
ですが背骨の最も下に位置する仙骨・尾骨。こちらがねじれていたり下方前傾していたり左右へ傾斜していたり。そうなると大黒柱の脊椎が身体を支える力を少なくし骨格が重力との釣り合いを見つけ出せなくなります。
この状態を長期にわたり保持しておられるかどうかは、大腿直筋を押し込んで硬さを確かめればわかります。大腿骨により胴体を支えるバランス力が失われたと同時に大腿直筋や外側広筋を硬化萎縮させて身体を支え続ける。このような骨格構造体は、皮膚近くに位置する機敏に操作可能な浅層筋の筋肉組織を常時固めて骨が身体を支える仕事の肩代わりをさせられています。
それが何十年もの長期に渡れば、支えるために固めた表層筋の硬さはさらに内部に位置する深層筋にまで固めて身体を支えるようになっていきます。
これは仙骨の上方が前方のお腹側に、仙骨の下方が後方の背中のほうへとずれている量に比例するかのように起こります。
そうなると重心が臍下丹田に落として安定させることができません。
おきあがりこぼしというぐらぐらゆれても元通りに立つ赤ちゃん用のおもちゃは、お腹のどまんなかの下部に重りがあればすっ立ちますが、重りが胸だったり頭だったりと上方に据えられるといつまでも不安定に揺れがつづきます。
人体も重心が狂えばそれと同じことが起きます。ですが人はそのとき足の前側の筋肉を固めたり腰部の筋肉を固めたりと、自らの軟部組織である筋肉を鉄筋のような硬さにして支えるという代償をはらってやりくりをするのです。それも無意識かつ無自覚のうちに。
やけに身体の柔軟性が薄いな、という身体の硬さに自信がある方は、多くは仙骨の変位があって起こります。
すでにこうした脚や腰を固めて全身の筋腱の硬直を慢性化させてしまうと、なかなか自力で復活しづらいものですが、伸筋や屈筋の丁寧な使い分け、呼吸の正確な運用トレーニング、身体の詰まりを見つけ出して骨格構造の変位を見つけて緩めることができるようであればセルフリセットもできるでしょう。
2. 「頭の平衡感覚」と診断学の接点
望診の応用: 臨床では、患者様の立位姿勢(望診)から、仙骨の変位による「代償的な頭部の傾き」を観察することが肝要です。
痰瘀互結との関連:「痰瘀互結」が頭部に停滞すると、平衡感覚の喪失感や、頭が重い(頭重感)といった症状が強まります。これに仙骨の構造的な歪みが加わることで、臨床的な難治性が生まれます。
解説:若いうちは頭傾きがある程度あっても、体液の循環力が平均的な体力で持って巡らせることができれば、さほど困ったことは感じないでしょう。個人差はあるものの、めまい等を覚えても一過性として改善することも多いようです。
ですが中高齢者となると、中医学でいう先天の精が残り少なくなり腎精が減少するに連れ、個人差はありますが、男性は64歳で、女性は49歳で天癸が尽きるといわれて、多くの場合は気血津液の代謝が低減していきます。
仙骨の変位から背骨のカーブがみだれも、気血津液の循環する動きの勢により柔軟な筋腱や皮膚を作れていた力が減少していきます。それがさらなる背骨のカーブを複雑につまらせ背骨を取り巻く腱や靭帯の硬化萎縮を強めていきます。すると最上階に位置する頭部にまでマイナスの影響を配ります。施術者であれば頭部の裏側にある後頭骨の下端や上端を触診させていただくことで、仙骨の歪みパターンが手に取るようにそこに現れだしてきます。
そのようになると詰めてはならない環椎・軸椎間のスペースが狭められ、脳内へと出入り循環する血や津液に対し、頭部には入りにくく、入ったものがでにくくなるという状態が作られます。ただそうしたでにくくなる場所は熱がこもって水分が熱せられ粘りけが徐々に高まりだし病理物質の痰へと変化していきます。そして痰が生じた場所には瘀血ができる素地をあたえらたこととなり、やがてそこに痰瘀互結といわれるものが生成されていくときがあります。
そうなる前にかなりの頭重感もあってつらい思いを通りますので。
仙骨の変位が大きな場合には、それに気づいて直そう!と思ったとき。
その日が取り掛かりの吉日です。
ただこうした場合でも
「足腰がぐらつく=下焦の気虚・血虚」かつ「頭の平衡感覚が狂う=清陽(気)が頭部に昇らない」という状態といいますので。
骨格構造体としての不安定さが、急性ででているものか。
それとも何年にもわたり変わらないかさらに悪化している慢性化したものか。
それにより対処策が変わってくる必要がでてくるかもしれません。
たとえば
「足腰がぐらつく=下焦の気虚・血虚」とは、だるまさんやおきあがりこぼしのお腹の真ん中に位置すべき重りが物理的に下焦(下腹部)の血が足らなくなっていてそこの重心が軽くなって、足腰がぐらつくのみではなく胴体もぐらついてしまう状態を表しています。
そういったときには下焦(大腸・小腸・膀胱・腎など)に気・血を補ったものを配るようにする方剤をもちいるのも手でしょう。それで重心が安定して運動がしやすくなります。特に重心位置が上下左右前後にズレた状態で動く運動は、やりすぎれば新たに複雑な歪みを設けますから、積極的に運動しましょうとお勧めすることはできません。そういったところを漢方や薬膳で計算して対応することもできるんです。これは私も施術だけを勉強していたときにはわかっていませんでした。中医学を勉強しだして引き出しがいくつも増えたようです。
下図では骨盤の仙骨の傾斜が小さく見えていると思います。見方tおしては、腹式呼吸をしたときに、第五腰椎下端の仙骨と触れた腰仙関節部が地面に対し水平におければ正解。この位置を身体が覚えられて再現できるよう修練なされば、身体は全身的に3歳児ほどのわかさをキープした筋肉に近づいていけることでしょう。そこをめざして、がんばってください!
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