2026年06月11日

腹診でわかる病因・病機  そして腹部の血瘀と大腰筋の凝りとのオーバーラップ

お腹を手技で触られ、違和感を感じることがあるかもしれません。

たとえば、肋骨と腹部の境目を季肋部といいますが、通常は季肋部の肋骨の下(乳首の真下位置)に手を当てて乳首方向へ向かい押し込むと、肋骨と腹部の隙間が開いて苦痛なく手が入ります。こうして肋軟骨部分を軽くつまむことができるのが正常です。
ところがこのような手技をおこなうと苦痛(苦満)感を感じる人がおられます。この症状は左右ともに起こりますが、一般的には右側に現れやすい傾向があります。気管支炎、慢性胃炎の患者に本証が認められることがあります。自覚症状として、充満感があり、苦しい。他者からも上記の手技をすると季肋部下に抵抗があり入りづらさを感じ、さらに押さえ込むと痛みや不快感を訴えられることになります。

この症状、当社比でありますが割合的に軽症重症をあわせれば10名中7名に及びます。

この操作を受けているお客様は、私と同業者でもない限り、はたしてなにをやられているのか見当がつきづらいと思います。

こちらは腹診で(胸脇苦満)と呼ばれる状態です。


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(胸脇苦満図)

胸脇苦満の病因病機として考えられるのは、
・ストレスや過度の情緒の変化による肝鬱気滞などの気機の阻害がある
・肝胆の病変がある

ガスなどは気体ですが、そういった気体が腹部内に停滞すると上方へ泡が浮き上がるように移動して集まります。ゆえに比較的、みぞおち周辺は気滞が蓄積して満杯になってパンパンになりやすいわけです。そうした状況です。

胸脇苦満も手技で緩めていくことで、徐々に停滞したものが散り散りとなり、季肋部へ指を入れることもできるようになっていきます。



このように腹部を詳細に按じたり膨隆した状態を観察したりすることで、病因病機を発見して病証にたどりつくことを腹診と申します。


腹診で実証と虚証の違いを見分ける手がかりのひとつに、
按じても痛みが軽い----虚証《喜按(按じられて心地よい)》
按じて痛みが顕著-----実証《拒按(按じられて苦痛)》
軽く按じると痛む-----病位が表証、浅部
強く按じると痛む-----病位が裏証、深部
という別があります。
押されて苦痛を感じたたら拒按ですから胸脇苦満は実証とされます。
(これはざっくりしたわけ方で厳密ではありませんので、目安として使う程度と心得てください)


上述と季肋部を押してみると、硬い張りがあって、自分では痞えるような痛みが感じられるが他者が触っても胸脇苦満ほどの抵抗は感じないこともあります。
これを脇下痞鞭(きょうかひこう)といいます。気滞症状と同時に内部で『痞=つかえる』不調感がみられるときもあります。
この痞える(つかえる)とは、基本的には気滞や痰湿や胃脾の不調からおきるものです。ですが痞えた気滞証の状態が長期にわたり継続されたとき。それは同時に血流の停滞を引き起こし数ヶ月、数年と血流の停滞が起きれば血瘀が生成され、その血瘀が刺痛があらわれる固定痛を生じさせます。



臍周囲や大腰筋との絡みで血瘀が多く生成されやすい場があります。長期にわたり血流が阻害されて血瘀と化している部位は鋭利な針先で刺される痛みに例えられる刺痛が特徴で、痛みの箇所が固定しているため触診で探索しやすいものです。ただ、こうした腹部内に生成された血瘀は、周囲の臓器をも巻き込むセメントのような固定剤として働いています。すると無理やり血瘀の塊を強圧することがあれば、すでに血瘀が生成されている組織周囲は栄養不足・潤い不足・老廃物の蓄積そして新陳代謝が劣るため再生不良の状態に陥っていますから、容易に出血等のひどい痛みがでるといった不利益を被ることになります。
腹部での出血があれば腹部内の網脂のようなバンドエイド役の組織が急場を凌ぐため傷口にまでおりてきて止血をしてくれます。ですがそうした網脂は、止血後もずっとその場で居座り続けてしま、その大網自体が腹部内の癒着をしてしまい、事態が悪化してしまいます。

そうした血瘀の問題が腹部で腹診時に見つかったとします。そしていい施術者がいればいいですが、当面、頼めそうではないという場合もあるでしょう。
そうしたときは活血化瘀等の瘀血を対処する方剤をもちいて状態の改善をはかるという手もあります。



またここからは腹診とは離れ、施術手技に話が移されます。。。
腹部瘀血は臍周囲や少腹といった部分にてよく見受けられます。
これは大腰筋という筋肉が凝り固まって周囲に癒着を示すことがありますが、そのときに血行を阻害させて血瘀を生成させる原因を造ることもみられるわけです。
その場合、いきなり腹部を強く按じるのはよくありません。
それに先んじて大腰筋の緊張状態をリセットをしておきましょう。
そのためには脚部の大腿直筋や外側広筋、大腿筋膜張筋、内転筋群のリリースをしておいてください。それだけで腹部内の硬直した状態は半減していることに気づかれると思います。その後に大腰筋をカウンターストレイン等の、大腰筋事態を強圧する以外の手技である程度緩みを作り出してください。すると大腰筋の芯の凝りがどこに点在しているか、どこが膨隆し、どこがワイヤーのごとく筋張っているか、そしてそれらが腹腔内のどちらに癒着の根を持っているか。それらを確認いたし、手を出す手順の算段を付けます。もし経絡に詳しい方でしたら、先んじて大腿直筋や内転筋などを解いたときに、そこに腎経や脾経、胃経、その他の経絡の不良な張りが見つけ出せておれば、それが腹部内部の癒着に寄っていることが多々ありますから、それらを総合して状態理解の道具にすれば、大腰筋のどこの層を、どの位置を、どこまで緩めるかが見えてきます。



確か医道の日本社の腹診ビデオは参考になりましたが、どうしても本で全体を通して腹診がわかればと思って探しているものの、いまだ手に入れられていません。
入門 目で見る臨床中医診断学という本が、いまのところ私が持っている腹診のなかでもっともデータとして詳しい本となります。
なので内臓マニュピレーションがベースに絡まった自己流というしかない腹部の見方に偏ってしまっております。
いずれ五臓六腑の構造を直接触って理解もできる側面もある腹診ですから、ちゃんと一定のルールをもってみることができるようになれればと願っているところです。



最後に、AIで描いてもらった腹診のイラストをいくつか掲載させていただきます。


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(腹診10パターン)


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(腹診30パターン)



腹診30パターンをよくご覧いただけますれば、瘀血のタイトルを冠したものの多くは臍から下、少腹あたりに頻出していることがわかりますね。
腹部を按じられているときに刺されるような固定痛を、それらの部位に感じたときには瘀血がそこにあります。血瘀が血管内で生成されれば血液の循環が阻害されてしまうため、対処が速やかになされることをお勧めいたします。



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(気滞は季肋部と心下、瘀血は少腹や臍下)
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2026年06月10日

深い理解には人体の構造理解と機能および作用の理解が組み合わされるとよい。

昨夜はボディチェックのお客様がおいでになられました。
身体的な状態の後退は観られません。
以前お会いしたときより立位や階段を登る際の安定感は増していました。
うれしい限りです!

ただ根本的な脾の弱さは私同様に折り紙付きの方ですし、
梅雨の時期が過ぎた後の酷暑では相当に難儀しそうだと本人が語ります。
脾が弱ければ、気の生成能力が低下いたします。
気が正常値届かなければ、とにかく体力的に一般の方と比して劣ります。
そのため酷暑では暑さによる汗と気の固摂作用失調による自汗によって体力の消耗が著しさが増していきます。
そうしたときの前に歩き方などをチェックさせていただいたのが印象に残りました。
施術では新たなツールと中医学の理解のおかげで、以前はケアができなかった深部までリリースがかないました!!
予定以上に精密に対応できたツールの活躍は、いまさらながら納得できる手技ができるようになってきたというところはうれしい。






ここからは今日のお題、気虚証の種類となります。


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(気虚証の分類と病態図)

脾が弱いということは、消化器の消化吸収機能が低下して気血の生成に制限が課された状態です。ら
それで気虚証へ。気の不足が進めば気陥証となります。



■ 気陥証とは

気陥証の絵に書かれた〘中気下陥〙とは、中がお腹の中の意味でお腹の中にある気が足らなくなって下方へ望ましくない状態に陥った(おちいる)状態を言い表します。

よって、胃下垂、脱肛、下腹部墜脹、子宮脱、子宮下垂、遊走腎等。お腹のなかの内臓が垂れ下がってしまう症状があれば気陥証と考えられます。
そして気虚証の臓腑弁証上における詳細分類からは肺・心・脾・胃・腎に関係が深いのです。気陥証となったなら、脾胃が下垂すれば胃下垂、腎が下垂すれば遊走腎のような具合ですね。


中医学的には気が脾の昇清作用により臓器を定位置まで持ち上げるといいますが、それはいったいどういった事象でしょうか?

立位や座位では胴体が垂直に立つことで、臓腑は重力の鉛直方向へ下降する作用によりつねに落ち続けています。(重力による臓腑の下降)
では主だって下垂しやすい中焦、下焦の臓腑を観察してみましょう。


胃・腎・子宮・脾(大腸・小腸など消化器全般)などグラム数を調べてみました。

各臓器の重量(グラム数)
​胃(い):約 100g 〜 150g
​腎臓(じんぞう):約 200g 〜 300g (左右2個の合計。1個あたり約100g〜150g)
​子宮(しきゅう):約 40g 〜 70g (※妊娠していない成人女性の通常時。妊娠時は約1kgまで肥大します)
​脾臓(ひぞう):約 80g 〜 120g
​小腸(しょうちょう):約 200g 〜 300g
​大腸(だいちょう):約 200g 〜 300g
​【補足:大腸・小腸などの消化器全般について】
胃・小腸・大腸などの「管腔臓器(中が空洞の臓器)」は、中に含まれる内容物(食渣や便)を除いた臓器そのものの肉厚(組織)だけの重量です。

指定された臓器の総グラム数
​上記で挙げた臓器の重量をすべて足し合わせると、総重量は以下のようになります。
​最小値の合計:約 820g
​最大値の合計:約 1,240g
​したがって、これら一連の臓器の総グラム数は**約 800g 〜 1,200g(およそ1kg前後)**となります。


こうしたおよそ1Kg前後の中焦・下焦にある臓器を重力に抗して持ち上げる力が持続的に働き続けています。
1Kgの臓器を下支えしながら持ち上げ続けるにはインナーマッスルの力を得た仕事がなされているはずです。
であれば構造上、呼吸の力(呼吸筋)を使っているのは明らかです。
腹部の下焦と中焦に関係している呼吸筋肉は、骨盤底筋、横隔膜、腹斜筋等、そして大腰筋です。
大腰筋の上端の付け根は横隔膜の唇に付着している。それにより大腰筋が緊張収縮すれば横隔膜が下方に引き下ろされ、大腰筋の弛緩により横隔膜は上方に引き上げられる。大腰筋は個人差はあるが、理論上は90Kgの出力ができる(鍛えて出力方法を学べば、さらに飛躍を遂げますが)。この呼吸時の大腰筋のおよそ1Kgの臓腑を持ち上げるに十分な作用がおこなわれる。呼吸とは、息を吸う:納めるのは納気といい腎の力、つまり腎経の経筋となる大腰筋の力となり、息を吐く操作は肺の力によります。
(※横隔膜の筋力のにより横隔靭帯を通して横隔膜および骨盤底筋群の上下動を操作している。そして腰椎や脊椎全体を上下に収縮伸展、または前後にそらしつて腹腔内を拡張収縮をする仕事を腹部の呼吸を支える筋群がし続けている)

こうした理想的な機能が発揮できておればひ弱じゃございません。


ですが理論上90Kgの出力があるはずの大腰筋が、石のように、鉄棒のように、またはスチールワイヤーのようになっていて、背中側の腹腔にびっちり癒着が進んでいるなら、どうなってしまうでしょうか。

こうなれば大腰筋はすでに硬化萎縮したまま。収縮と伸長を繰り返して呼吸を助けることはできません。
背中側の腹腔に大腰筋が癒着したままでは、もし仮にその大腰筋をさらに収縮させれば腹腔壁を包む膜層がむしり取られ大腰筋の筋膜も同時に乖離のときに組織破壊がなされますから、乖離による激痛を感じるでしょう。別名、ギックリ腰という大腰筋の部分的な筋断裂症候群です。

一般の方には大腰筋と言われても、図や映像で観るものという感じでしょうが、施術者としてみれば、異なった見立てをしています。
私では、最低でも、みぞおち奥に位置する大腰筋の上端部、その直下5〜6cmの腹部側と背中側をわけて観察、大腰筋中腹のオヘソを含む部位の周囲約6cmほどの腹部側と背中側をわけて観察、下腹部から鼠径部までの腹部側と背中側をわけて観察、最後に鼠径靭帯にかかる部位とその下の小転子付着箇所。左右大腰筋で総計14箇所をチェックするのです。そして患部を発見して、さらに細分化して患部との関連を含めて検査の部位を厳密化していきます。それをした後に大腰筋を理想上に仕上げて行っています。急性の方はこんなに時間はかかるものではありませんが、慢性の方は構造上のトラブルがおきていれば、非常に複雑な状態を呈する場合が多いのです。それを緻密に計算しながらリリースを重ねることによらねば大腰筋は収縮と伸長による横隔膜操作や骨盤底筋群の動きを起こすことはできません。(ショートカットしてカウンターストレインのTポイントをインジケーターにして解くことで済ませることもできます。ですが、正直、もとに気虚が進む方には瞬間芸的な改善でしかないと考えています。・・・残念ながら、戻りがありますし、戻りが早いだけでなく、外的に急激にもたらされたバランスの変化についていけずに、別のところに歪みを設ける方の割合は少なくありませんでした。それを知っているので、手をかけるところでありかけた分だけ利が還るのが大腰筋の改善であると割り切って、丁寧にみていきます。)

ただし大腰筋だけみているのは問題で、腰椎を腹側で囲む左右大腰筋の対になる背皮で腰椎を囲む左右の起立筋を含めて計算して釣り合いをもったリリースをしなければ腰椎が垂直を得て積み重ねられることがありません。この対処が難しいのは、大腰筋から対処するか、起立筋から解くかです。それは立位でのチェックをするときのお客様の足裏の重心点を把握できれば、どちらを優先して解いて合わせるかがわかると思います。



そして以下の図をご覧ください。
左手は、正常な骨盤の位置で腹圧も一定しております。
対して中央と右手は、それぞれ骨盤前傾という構造的な変位における失調と気陥証という気が足らなくなって内臓が下垂するる状態の図です。


中央の骨盤前傾図と右手の気陥証図は合致しています。



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(気陥証と骨盤前傾図)


この場合、
1.構造的な乱れを正すことで改善させるか、
2.足らなくなった気を補う(補気)ことで改善を期待するのか。
3.または構造と作用と同時にサポートするべきか。


という3つにわたる対処法が考えられるようになったわけです。

1.構造的な乱れを正すことで改善させる:ときの問題は。
骨盤前傾による構造的な乱れを正しても、飲食不節や過労や睡眠不良などにより気が損なわれたままであれば気陥証から抜け出すことはなく、そのままとなる。

2.足らなくなった気を補う(補気)ことで改善を期待ときの問題は。
飲食に気をつけ睡眠を細心の注意をしながら気を補う食薬や方財を取り続けても、すでに慢性化した骨盤前傾の状態は大腰筋の組織が他の腹腔や臓腑や鼠径靭帯等の組織との癒着が進み自然にそれが乖離することは考えにくい場合は、そのままとなる。

3.構造と作用と同時にサポートするべき問題は。
これが一番、改善確率を高めてくれる積極採用させていきたいアプローチです。

いずれにせよ実行上の大腰筋の状態把握は癒着箇所を硬さ、太さ、炎症熱、筋張り、乾燥や大腰筋と癒着する他の組織の把握技術が必要ですしリリースの技術も必須です。
気陥証以外の証を合わせて持っている場合も考えられます。たとえば気滞証などがあれば補気をすれば誤治の失策となり副作用が起こり効果がでません。故に、浅い見立てでことをはじめることは、専門家としてはお勧めしかねます。




私には中医学の知識が考具となってつかえるようになってきたとき。手技療法上で臨床で観察して気づいたが理由が見当がつかないようなことが、多くあったのです。そうしたときに中医学の機能と作用の理解では行間が抜けて理解が表面化した部分が、手技による構造的な観察可能で事実から読み溶けるものだが、その裏側の理由が言語を通して説明できない場合があります。そうした手技の構造主体と中医学の機能・作用主体のふたつの事象を並べて思考のテーブルに乗せたとき。まさに表面的な理解から脱して腑に落ちるものが見つかります。
深い理解には人体の構造理解と機能および作用の理解が組み合わされるとよい。


実際、昨日の施術でも、そうした場面をいくつも遭遇しました。特に腹部のリリースでは。
posted by スズキ at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年06月09日

鬱証について

中国、元の時代の王安道は『疾病の原因の多くは鬱にある』というのです。


『鬱が、疾病のほとんどの原因に絡んでいるって?』
正直、驚きました。
いったいそれはどういう意味だろう。






Geminiで、鬱証の全人口に対する%を尋ねてみました。
すると​日本国内の割合(日本の厚生労働省や国立精神・神経医療研究センターの調査)

 ​今まさにうつ病である人の割合(12ヶ月有病率):約2%〜3%
​  100人におよそ2〜3人(50人に1人程度)が、過去1年間のうちにうつ病を経験しています。

​■ 一生のうちに一度は経験する人の割合(生涯有病率):約6%〜7.5%
​  およそ15人に1人(調査によっては6〜7人に1人とも言われる)が、生涯のどこかでうつ病を経験するとされています。

ただし厚生労働省の資料等では、うつ病の症状に悩んでいる人のうち、実際に医療機関を受診しているのは全体の4分の1程度に過ぎず、残りの4分の3は病気と気づかなかったり、受診をためらったりしている潜在的なケース(未受診)であるとも指摘されています。
この指摘を受けて、いままさにうつ病である人の割合(12ヶ月有病率):約2%〜3%に残りの潜在的ケースを含めますと、8%〜12%となるようです。
またWHOのデータでは55歳〜74歳の中高年層で発症率が高くなる傾向があり、特に60代前半の女性では人口比の約8%近くにのぼるとされています。








鬱が、なぜ、疾病を引き起こす原因になれるのでしょうか?

鬱は初期の段階では実証ですが、中期を過ぎれば虚証へと変わります。
虚証では鬱も多岐にわたり気を滞らせることで、血や津液の循環にも悪影響が及びます。血流が滞り《瘀血》が作られたり、津液が滞り《痰湿》へと派生するからです。これら瘀血や痰湿といった病理物質が生成され血や津液の流れが物理的障害となり臓腑や組織へと営養を運べなくなり正常な機能発揮の妨げとなります。



鬱とは、《気が滞り流れなくなった状態》を指します。
気の滞る原因には、《臓腑失調・環境変化:遺伝、過労、加齢、更年期、定年》などと《七情(精神的刺激)》があります。



ここでは「鬱証になる感情」を考察していきましょう。
主に鬱に関わる感情は次の3つ。

1.怒り(怒りの抑圧、理不尽への耐え忍び)

2.憂思(思い悩む、考え込む)

3.悲・憂(深い悲しみ、憂い)




多少の感情の波風は収まりますが、過度な感情は気の動き(気機の昇降出入)の異常をもたらされ、健康な気血津液の循環が阻害された状態になります。

1.怒りは気を激しく〘上昇〙させる感情で、気機が上昇し続けて他には巡りづらくなり滞りを生みます。(気滞・気鬱)

2.憂思では気の動きがピタッと止まり一箇所にかたまってしまいます。(気結)

3.悲・憂では 深い悲しみは肺のエネルギー(肺気)を文字通り消耗させ、気機を内向きに消沈させます。(気消)

※憂思や悲・憂が鬱の引き金を引く核心ではありますが、その根底には怒りの抑圧があるとされています。たとえば、ナフサ価格の高騰による生活出費の高騰を思い悩む心の奥底に、戦争なんかはじめやがってといった自分のせいじゃないが不利益が押し付けられたといった怒りがありますよね。


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(鬱証の図)

鬱証の初期段階は実証で気血の詰まりから起こる、
@肝気鬱結証
A気鬱化火証、(肝気鬱結が長引いて熱化)
B気滞痰鬱証、(津液が滞り痰を形成)

などがあげられるでしょう。
肝気鬱結から徐々に長引くに連れて気の詰まりが強まって血や津液にも滞りが飛び火していきます。

憂思では脾の消化吸収による運化の働きと昇清作用(脾気により水穀精微を肺・心・脳に送る作用)と、
悲・憂では肺のエネルギーが消耗して呼吸機能が大幅に制限を受け、清気を取り込み水穀精微と混ぜて宗気を造り呼吸機能と心の血の血液循環機能を低減させたことによるのでしょう。
それにより前期では気が停滞した実証でしたが後期の気の滞りから気血津液の消耗による不足があらわれてきます。

鬱証の後期段階は虚証で気や陰液(血と津液)の消耗が激しくなります。
C 心神不安証(心気・心血の不足)
D 心脾両虚証(心血虚 + 脾気虚)
E 陰虚火旺証(長期化による腎陰枯渇・心火旺盛)

心は脳と通じ精神を安定させる作用を発揮します。
鬱の後期虚証では、気や陰液の消耗の著しさから心気や心血が不足すると精神の安定が保てなくなり、精神的な不調と血の不足からくる四肢のだるさなどがあらわれてきます。



では薬膳や中医学では、それぞれどういった対策をとるでしょうか?
もちろん対策は全体の対策は[疏肝解鬱・養心安神]です。

初期
@肝気鬱結証、  対策:[疏肝理気
A気鬱化火証、   対策:[清熱瀉火]
B気滞痰鬱証、  対策:[理気解鬱化痰]

終期
C 心神不安証、  対策:[養心安神
D 心脾両虚証、  対策:[健脾養心・益気補血]
E 陰虚火旺証、  対策:[滋陰清熱・鎮心安神]


対策の[疏肝理気]に対応する食材をお選びくださるようご検討しただければと思います。もちろんそれぞれの対策にあった薬膳メニューもございます。ただ実際の臨床で証が複数にまたがる方も多くみうけられます。そうしたときはしっかり専門家にご相談いただくよう心がけてください。









最後に。

個人的に、いまは自室にこもって勉強をする日々、実用的な知恵や知識が増えていく喜びを感じています。
個人ノルマの多さからしんどいものの充実した一日で、時間はあっという間に過ぎていきます。

そんなときでも鬱証の初期段階とされる肝気鬱結証等と考えられる状態には見に覚えはあって、潜在的なケースとしてカウントされそうです。
身勝手な感じ方で恐縮ですが、私が子供の頃の昭和のニュースの事件でも決してつらい内容がなかったわけではありません。ですが、今のニュースを観たとき。なにかが変わっていく姿を感じられてなりません。そこにフォーカスを当て過ぎたら自然に鬱々とした気分となっていきそうで恐ろしいことです。

人は、自分の意識を向け注視したものの像が大きく描かれて他が見えなくなる習性がありますから、わざわざ自分の手に余ることで思い悩みつづけるよりも、自分の手で創り出せるものにどれだけ注視し続けることができるか。

それがひとつの人として生きる修行だと思っています。

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2026年06月08日

望診の流れ

望診には、神も姿勢も歩き方、顔の目も、鼻も、口も、耳も、舌も、皮膚も、髪も、爪もと様々な調べる項目があります。ですが毎回、これらすべてを調べていたら、限られた時間がそれだけで消えてしまいます。
それを避けるよう要領よく調べる必要があります。
望診項目をひとつずつすべて調べるのではなく、異常部位を素早く見つけて、そこから情報を拾い上げます。


具体的にどのような過程を通るでしょうか。

まず、まっさきに押さえたいポイントがあります!
押さえたいポイント
最優先でチェックする3大指標には(眼(有神・無神)、顔色、舌)があります。

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(望診の最優先3大指標:図解)

優先項目 診るべきポイント 読み取れること
1. 目(神気) 瞳の輝き、視線の定まり方、白目の色| → 精気の盛衰(バッテリー残量)、精神状態、肝の乱れ
2. 顔の色沢 全体のトーン、肌の「ツヤ・明度」| → 気血の充実度、五臓のトラブルの傾向
3. 舌(舌診) 舌体の色・形、苔の厚さと水分量| → 寒熱・虚実、気血の巡り、湿気の有無(痰湿・血瘀の有無)







望診の流れ


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(望診の効率的な流れ図)

ステップ1 ドアを開けてから着席するまで(全体観察・動)
遠見から、神、歩き方、姿勢を診る。
​チェック:目に輝きはあるか(神)、歩き方や姿勢に違和感はないか(形態・動態)。

​「神(しん)」の有無: 目に輝きがあるか、表情に生き生きとした生気があるか。神が失われている(得神・失神の判断)場合は、全体的な虚損や精神的な疲労が深いと一瞬で判断できます。
​「形態・動態」: 歩き方、姿勢、肩の左右差、足の運び。ここで筋肉や骨格のゆがみ、気血の巡りの悪さ(滞り)のあたりをつけます。
異常がなければスルーします。
異常等がみられれば記憶、記録して次に進みます。


ステップ2 対面で挨拶中・着席直後(局所観察・静)
近見から、顔全体のツヤや色を確認します。
​チェック:顔全体のツヤと色(青・赤・黄・白・黒)をパッと見て、例えば「黄色くツヤがなければ脾胃の虚弱」といった大まかな仮説(証のあたり)を立てます。

​「色沢(しきたく)」のスクリーニング: 顔全体の「色(青・赤・黄・白・黒)」と「ツヤ・潤い」をパッと見ます。
​例えば、顔色全体がくすんで黒ずんでいれば「血瘀(けつお)」や「腎虚」、黄色くツヤがなければ「脾胃の虚弱」といったように、この段階で大まかな「証(しょう)」の仮説を立てます。
異常がなければスルーします。
1.遠見でえた異常と2.近見でえた異状から、全体仮説を立てます。


ステップ3 問診中に(正常な部位はスルーし、異常な部位のみピンポイントで確認)
全体仮説と五官の局所望診により仮説検証をおこないます。
​チェック:仮説に関連するパーツだけをピンポイントで確認します。例えば、「血瘀」の仮説があれば、唇の色や舌裏の静脈を見ます。すべての五官を均等に診ることはしません。
全体からアタリをつけた後、初めて特定のパーツに視点を落とします。
​五官のチェック: 目の充血(肝火)、唇の色(淡白なら血虚、紫暗なら血瘀)など、仮説を検証するために必要なパーツ「だけ」をピンポイントで確認します。
​舌診(ぜっしん): 望診の中で最も客観的で裏切らない指標です。会話の区切りや、意図して出してもらうタイミングで「舌質(色・形)」と「舌苔(色・厚さ・潤い)」を数秒で診ます。


ステップ4(舌診による答え合わせ)
舌診で舌質・舌苔を観て証を確定します。
​チェック:舌診は最も客観的な指標です。Step 2〜3で立てた仮説が正しいかを数秒で確認し、最終的な「証(気虚、血瘀など)」を確定させます。
舌診でえた結果が仮説検証した内容と異なったとき。または問診で新たな情報を得たとき、施術後に状態を確認するときには、再度、ステップ1に戻り繰り返します。






私ごとですが。
望診の項目をすべて記憶することも大変だが、毎回の施術ごと、すべてを調べるのはさらに大変。臨床でそんなことはしていないことは、中医師に一度でもお世話になればわかります。

私がかつて脈診講座を受講したことがあり、脈診をするときのことを思い出しました。脈をとったとき、脈が硬か柔和か軟かという硬軟がわかります。この時点で、虚実が判明しますから、虚証の脈であれば、あとは実証の脈状は除外して調べられます。知りたい答えを探索するには、除外できるものをさっと除外して脳の負荷を減らしていくようにします。すると虚実を気にしつづける脳を黙らせ、すっきり探索が続けられます。そうした脈診表が手渡されたことを思いだされました。
望診も、遠見でざっくり焦点を当てる必要ありを得る考えもありますが、考えなくてよくなった部分を除外すると等しいといえなくもありません。
個人的に脈診で除外できるものを弾いて残ったものが答えという思考回路ができているため、望診でもそうした流れで物が見えてきます。


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2026年06月07日

問診 十問歌

問診をするとき、ただ漫然とお客様が語る主訴を伺うだけでは偏った表裏、寒熱、虚実、陰陽を判断する情報はえられません。

では、どのような手順で問診を進めていけば、漏れやダブりなく情報をうかがい知ることができるでしょうか?

それは明代の医師であり、『景岳全書』の著者である張景岳(張介賓)が遺した『十問歌』があります。これは、中医学の問診における不朽のバイブルとなっています。

以下に『十問歌』原文と、臨床的な意味がしっかりと伝わるよう意図を込めた読み下し文(現代語訳を交えた解釈)をまとめました。




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​1. 『十問歌』原文

​一問寒熱二問

三問頭身四問便

五問飲食六問

渇倶当辨

九問旧病十問

(※ 下方に概説あり)

再兼服薬参機変。


​婦人尤必問経期、

遅速閉崩皆可験。

通産去後作何状、

更箇原因要詳辨。


育嬰条中多妙法、

幼児孤特莫軽視。





​2. 意図を持った読み下し文と臨床的解釈


​単なる直訳ではなく、「何を診るためにこの問いが必要なのか」という臨床的な意図(メカニズム)が伝わるように構成しています。


​【本歌:基本の十問】


​一に寒熱(かんねつ)を問い、二に汗(あせ)を問う
​読み下しの意図: まず最初に、身体の表(バリア)で何が起きているかを確認せよ。悪寒と発熱の有無で「外邪(邪気)がどこにいるか」を見極め、汗の出方(自汗か盗汗か)によって「気血の虚実や陰陽のバランス」を即座に判断するためである。


​三に頭身(とうしん)を問い、四に便(べん)を問う
​読み下しの意図: 次に、全身の経絡の滞りと排泄の状態を診よ。頭や身体の痛み・重だるさから「気血津液の巡り(滞りや不足)」を察知し、大便の状態から「脾胃(消化器)の寒熱や、腸管の潤い」を突き止める。


​五に飲食(いんしょく)を問い、六に胸(むね)を問う
​読み下しの意図: 身体の中央(中焦)のエネルギー製造工場の動きを診よ。食欲や味覚(飲食・口味)から「胃気の強さ・脾の運化」を測り、胸や腹の張り(胸腹)から「気がスムーズに流れているか、あるいはストレスや痰瘀(気滞・痰瘀互結)で詰まっていないか」を判別する。


​七に聾(ろう=耳目)を問い、八に渇(かつ)を問い、倶(とも)に当(まさ)に辨(べん)ずべし
​読み下しの意図: 最上部のアンテナと体内の水分メーターを合わせて診よ。耳鳴りやめまい(耳目)は「清陽の気が頭に昇っているか、あるいは腎精が足りているか」を示し、口の渇き(渇)は「体内の熱の強さと、津液の損傷度合い」を如実に表すため、これらは共に注意深く弁証しなければならない。


​九に旧病(きゅうびょう=既往歴)を問い、十に因(いん=病因)を問う
​読み下しの意図: 根底にある原因を探れ。九番目には「これまでの病歴や体質」を確認し、十番目には「今回発病した直接のきっかけ(精神的ストレス、飲食の不摂生、過労など)」を突き止める。
​再(ふたた)び服薬(ふくやく)を兼ねて機変(きへん)に参ず
​読み下しの意図: 最後に、これまで飲んできた薬とその反応を重ね合わせ、病態がどう変化(機変)しているかまでを総合的に観察し、柔軟に考察せよ。




​【別歌:女性と小児への配慮】
​張景岳は、一般的な十問にとどまらず、身体の構造やライフステージが異なる「女性(婦人科)」と「小児(小児科)」に対して、以下の項目を絶対に忘れてはならないと付け加えています。


​婦人は尤(もっと)も必ず経期(けいき=月経)を問うべし、遅速(ちそく)・閉崩(へいほう)皆(みな)験(けん)ずべし
​読み下しの意図: 女性を診る際は、特に月経の周期・状態を必ず問わねばならない。周期が早いか遅いか(遅速)、無月経や不正出血(閉崩)があるかを見ることで、女性の根本である「血(Blood)」の充実度や巡り、肝・腎の機能をすべて検証できるからである。
​通産(つうさん=出産・流産)去後(きご)何状(かじょう)をなすか、更(さら)に箇(こ)の原因(げんいん)を詳細に辨(べん)ずるを要す
​読み下しの意図: 出産や流産を経験した後に、身体がどのような状態になったのか。その後の体調不良に繋がる原因(気血の消耗や瘀血の停滞など)を、さらに細かく詳細に分析しなければならない。


​育嬰条中(いくえいじょうちゅう)に妙法(みょうほう)多し、幼児(ようじ)は孤特(ことく)にして軽視すること莫(なか)れ
​読み下しの意図: 小児(育嬰)の治療論の中には、先人の素晴らしい知恵(妙法)が多く隠されている。言葉で症状を訴えられない幼児の病態は、大人とは異なる独特で特殊なもの(孤特)であり、決して見過ごしたり軽んじたりしてはならない(顔色、食欲、機嫌、夜泣きなどを注意深く観察せよ)。





(※ 概説あり)
【十問歌:体調を見極める10の扉(概説)】

1.寒 熱 ─── 体の「冷え」か「熱」か
2.   ─── 「エネルギー(気)」や「潤い」の漏れ
3.頭 身 ─── 痛みの性質、体の重さ(湿気の有無)
4.便 尿 ─── 胃腸の元気度、水分の排泄
5.飲 食 ─── 栄養をエネルギーに変える力
6.   ─── ストレスによる「気の滞り(イライラ)」
7.   ─── 生育・エイジングを司る「腎」の強さ
8.   ─── 体の中の水分不足度
9.旧 病 ─── 生まれ持った体質のベース
10. 因  ─── 不調を引き起こした根本原因
【女性の特効門】月経・おりもの ─── 「血(けつ)」の充実度と巡り





まとめ
​張景岳の『十問歌』が素晴らしいのは、単に「10個の質問を上から順にしろ」と言っているのではなく、**「表(外側)から裏(内側)へ」「上焦から下焦へ」**と、人間の体を立体的に捉えるための思考ルートを示している点にあります。
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皮膚の望診のひとつ、皮膚病変(熱化物:ねつかぶつ)の「癰(よう)・疽(そ)・疔(ちょう)・癤(せつ)」について

『実用中医学』のテキストを読むと、中医学の伝統的な皮膚病変(熱化物:ねつかぶつ)の「癰(よう)・疽(そ)・疔(ちょう)・癤(せつ)」の名が出てくることがあります。ですが、私には具体的な症状画像や病理背景が思い描けなかったため、調べてみました。


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@ 癰(よう)の特徴と背景

【病態と望診の特徴】
皮膚の浅表部に発生し、中に膿を含んで出口がふさがり、赤く大きく盛り上がるのが最大の特徴です。局所の熱感と激しい拍動性の痛みを伴います(陽証・実証)。

【具体例】

大きめの「背中の大きな腫れ物」「首の後ろの大きな肥大したおでき(項癰:こうよう)」、複数の毛包が融合して巨大化した蜂窩織炎(ほうかしきえん)のような状態。
【なりやすいシーン(人物像・環境)】
年齢・性別: 20代〜50代の比較的体力が充実している働き盛りの男性
生活環境・食事: 日常的にお酒、脂っこい食事(ラーメン、揚げ物)、辛いもの、肉類の過剰摂取が多く、体内に「湿熱(しつねつ)」と「熱毒」を溜め込んでいる環境。
季節: 体内に熱がこもりやすく、湿気も高い梅雨から夏(盛夏)に最も多発します。



A 疽(そ)の特徴と背景

【病態と望診の特徴】
癰とは対照的に、平坦で膿頭を持たず、皮膚の色が変わらない(赤くならない)が、根が極めて深いのが特徴です。熱感があまりなく、鈍い痛みが続きます。体のエネルギーが枯渇し、邪気を体表に押し出せない深刻な状態を示します(陰証・虚証)

【具体例】
糖尿病患者の足の壊疽(えそ)、床ずれ(褥瘡:じょくそう)が深部まで進行した状態、あるいは骨髄炎を伴うような深い皮膚潰瘍。
【なりやすいシーン(人物像・環境)】
年齢・性別: 高齢者、あるいは慢性疾患を長年患っている男女。
生活環境・体質: 糖尿病(消渇:しょうかつ)の既往がある方、寝たきりで血行が著しく悪い環境、過度な過労や大病後で「気血(きけつ)」や「腎精(じんせい)」が著しく消耗している体質。
季節: 体の陽気(温めるエネルギー)が衰え、血行がさらに悪化しやすい晩秋から冬の寒い時期に悪化・発生しやすくなります。



B 疔(ちょう)の特徴と背景

【病態と望診の特徴】
根が非常に深く、釘が刺さったような硬さを持ち、顔面に生じやすいのが特徴です。初期は粟(あわ)粒のように小さいですが、進行が極めて早く、不用意に潰すと毒素が血液に乗って全身(脳など)に回り、高熱を発する危険(走黄:そうおう、現代の敗血症)があります。

【具体例】
鼻の頭や唇の周り(危険三角地帯)にできた、芯が極めて硬くて激痛を伴う小さな「めんちょう(面疔)」。
【なりやすいシーン(人物像・環境)】
年齢・性別: 10代〜30代の青年期・壮年期。性別を問わず、特に皮脂分泌が盛んな世代。
生活環境・心理: 激しい精神的ストレス、イライラ、不眠が続き、「肝火(かんか)」や「心火(しんか)」という精神的な熱が顔面に突き上げている環境。また、不衛生な手で顔を触る習慣。
季節: 外気の熱の影響を受けやすく、自律神経も乱れやすい春先から初夏にかけての季節の変わり目。



C 癤(せつ)の特徴と背景

【病態と望診の特徴】
皮膚の浅表部に発生し、大きさは1寸以下で、赤く腫れて軽度の熱と痛みを伴います。比較的浅く小さいため、膿が出れば速やかに組織が修復され、痕を残さず治りやすいマイルドな病変です。

【具体例】
一般的な「おでき」、単発の大きなニキビ、毛嚢炎(もうのうえん)。お尻や太もも、顔などにポツポツとできるもの。
【なりやすいシーン(人物像・環境)】
年齢・性別: 乳幼児から小児、または10代の学生に多く見られますが、全年齢の男女に起こり得ます。
生活環境・衛生: 汗をかいた後に肌を拭かずに放置する、不衛生な衣類の着用、または一時的な免疫力低下。子供が公園で泥遊びをした後に皮膚を掻き壊した環境など。
季節: 汗を大量にかき、皮膚のバリア機能(中医学でいう「衛気:えき」)が汗とともに漏れ出て弱りやすい夏(汗疹がひどくなる時期)に最も多く発生します。



💡 先生からの「望診」まとめ
臨床において患者さんの肌を見たとき、
「大きく赤く腫れている(癰)」なら⇒胃腸の湿熱(食べ過ぎ・飲み過ぎ)を疑う
「赤くならず深く沈んでいる(疽)」なら⇒腎虚や大まかなエネルギー不足(糖尿病・高齢)を疑う
「顔に小さくとも釘のように硬い芯がある(疔)」なら⇒強いストレスや過労による火の燃え上がりを疑う
このように、皮膚の形と発生しているシチュエーションを組み合わせることで、原因(弁証)が手に取るように見えてきます。

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2026年06月06日

5種類の病因『邪正の盛衰、陰陽の失調、気血津液の失調、経絡の病機、臓腑の病機』

前ブログでは、正気と邪気のバランスが乱れて邪気が正気に対し旺盛となり虚証か実証が判定されます。
正邪のバランスの崩れで邪気が病をもたらすという、病機のなかの一種類となります。


ではそれを含め病気を引き起こす病機の全体を眺めてみましょう。

- 邪正の盛衰
- 陰陽の失調
- 気血津液の失調
- 経絡の病機
- 臓腑の病機


などがあります。


以下に図解を表示させていただきます。

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(病気を引き起こす5種類:解説図)拡大してご覧ください


それぞれを略説すれば、

◎ 最上層が【邪正の盛衰】として全体像を眺める大枠です。
正気(免疫・抵抗力)と邪気(病気の原因・ストレス)との戦いです


◎ 第二層が【陰陽バランスが失調】です。陰陽失調では、臓腑・経絡・気血津液・営気衛気などの相互関係、表裏出入、上下昇降などの機能が失われます。
(陰は物質・滋養・冷却を示し、陽はエネルギー・温煦作用で温めるものです。陰または陽、または陰陽同時に失調するときもあります。)


◎ 第三層は【気血津液の失調】と【経絡の病機】があります。
○ 気血津液の失調は、(気:推動・温煦作用の異常)、(血:血虚や瘀血)、(津液:陰虚や痰湿)などをもたらします。全身を循環して臓腑・経絡・組織を栄養する気血の機能を始め、様々な生理機能に影響を与えます。
○ 経絡の病機は、上述の気血を運ぶ通り道をつまらせることになり、関係書記官の機能を衰退(亢進)させ、運行機能が失調すると関係諸器官の生理活動に影響します。また経絡は気血の循環が滞れば外邪が体内へと侵入する際の経路であり、内邪の波及する通り道にもなります。
そして気血津液の失調と経絡の病機は、相互に影響し合います。


◎ 最下層が【臓腑の病機】となります。第一層〜第三層による失調が病理変化として最終的に臓腑に集約・発現いたします。臓腑病機では臓腑の機能失調と、臓腑の陰陽気血の失調がおきます。各臓腑の機能や、各臓腑間の相互関係にも支障が生じます。



まとめとして、
これらは以前にブログで弁証論治の弁証法について書かせていただいたことがありますが、こうした病を引き起こす5つの病機を知ることが、診断と治療方針の決定につながります。
診断でつかわれる弁証法には、八綱弁証(陰陽・表裏・虚実・寒熱)気血津液弁証経絡弁証臓腑弁証などがありましたね。



posted by スズキ at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

最低でも正邪が中庸、理想は正気を増やして邪気を取り除く対処法(扶正祛邪)で


先日、虚証と実証では推拿療法の手技が違ってくると書かせていただきました。
当ブログ( [虚証と実証、推拿の運用は異なりますか?](  https://bodywise-note.seesaa.net/article/520856811.html  ))。



今回は虚証と実証について、ご一緒に理解を深めたいと思います。

病気を引き起こす邪気と邪気を抑制する正気の戦いが、絶えず体の内側でなされています。
邪気には外因(風邪・寒邪・暑邪・温邪・燥邪・火邪(+疫癘邪気(ウイルス、細菌))・内因(情志失調)・不内外因(飲食不節、労逸過度、瘀血、痰飲)などがあります。それら病をもたらす攻撃主となる邪気をディフェンス役の正気が勝れば健康は保たれ、邪気が正気に勝れば疾病がもたらされます。

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(健康と病は正気と邪気とのバランスで現れてくる図)

次に、以下の図解をご覧ください。


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(邪気と正気でみる虚証・実証図解)


以下、正気と邪気の数はわかりやすさをとり、任意なものとします。

【健康  正気:邪気 = 3 : 3】
基準として図中の真ん中となる健康な状態を観察して下さい。
正気が3体いて邪気も3体おり、両者が釣り合っている中庸となっております。正気が邪気による攻撃量に負けずについていけております。正直言えば、余裕がない状態で危なっかしいものの、中庸であれば病に犯されることなく防ぐことはできてます。理想としては正気を増やす生活習慣を心がけ、たとえ邪気の数が急激に増えても負けずに対応できるようにしましょう。


【虚証  正気:邪気 = 1 : 2】
図中の左手の虚証をご覧ください。
虚証では正気が1体で邪気が2体となります。すると正気を1体加算すれば邪気の2体と釣り合うじゃないかと思われるでしょう。ですが健康状態では正気が3体で成り立っております。すると正気を補う数量は健康な正気と同数となる正気を2体加算すべきでしょう。これで邪気より正気が勝ります。正気を加えて対処する、扶正(正気を扶養して増やす)をおこない調和させます。


【実証  正気:邪気 = 3 : 6】
図中の右手の実証をご覧ください。
実証では正気が3体で邪気が6体となります。すると正気を3体加算すれば邪気の6体と釣り合うじゃないかと思われるでしょう。ですがそれでは大量に発生している邪気が体内にずっと居続けることによる不利益が生じます。この場合は、邪気を3体取り除くことで正気と邪気が3体ずつと中庸になります。邪気を取り除く、祛邪(邪気を取り除く)をおこない調和させます。



つまり虚証は正気を加えるのが治療となり、実証は邪気を取り除くことが治療となります。
これを間違えて虚証で邪気を取り除いても病からの回復は遠く、実証で正気を増やしても体内に取り残された邪気はしばらくの間は生きながらえて悪さを継続し病が続けられるわけです。

簡単に考えれば、基本は健康状態の正邪のバランスへと、
虚証では正気を実証では邪気を移行させればいいわけですね。
それで症状も落ち着いてまいります。

虚証か実証かが異なれば対処法を変えなければなりません。


そうした理解が及べば、
『あれっ?自分は実証になるのか、虚証になるのかわからないな・・・』

とお考えいただく思考回路が出来上がりましたらしめたものです。




ただ、、、ここで厄介なことをいうようで恐縮ですが、証は短期で転じることがあることをご理解下さい。
下に例示いたします。
風邪の引き始めは『葛根湯』という言葉を聞いたことはありませんか?
風邪を引いた初期状態の証と中期状態の証とでは証が短期間に移り変わっていきます。
風邪の引きはじめの悪寒、背部の凝り、むくみなどは「外感風寒表実証(がいかんふうかんひょうじつしょう)」です。葛根湯は「辛温解表(しんおんげひょう)」、つまり「体を温めて毛穴を開き、汗と一緒に邪気(ウイルスや寒けの元)を外へ追い出す」処方です。それは体表部にまだ邪気がいるから効くもので、表実証という実証に対する処方をおこなうことがあります。
それが中期になれば、邪気は体表を通り過ぎてさらに奥へと病位を侵攻していきます。するとすでに邪気と戦い正気が消耗され数が少なくなっていれば実証から虚証へと転じる場合もでてまいります。虚証であれば正気を加えることも必要となってきたわけです。
このように証は場合により、短期間での虚実転換が現れることがあると知られております。ですから必要な対応とは、そのとき、そのときの証を正確に四診を持って判断して治療にあたることが求められます。

posted by スズキ at 09:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年06月05日

体温を支える熱源は、内蔵55%、脳16%、筋肉25%。内蔵が体温を高める最大の立役者だから内蔵が強い遺伝子を持てないと元気には、なれないの ?答えは、NOです!

人は平熱よりも6度程度高くなるとがん細胞は死滅し始め、1度ほど下がったら逆にがんが活性化します。全身が30度を下回ると意識を失い死の危険にさらされます。

こう考えると平熱の維持がいかに重要か、うかがい知ることができます。

体調がいいときも悪いときも、身体ができるだけ正常に機能を保つために体の深部が37度前後になるよう調整しています。すると楽々体温を保てるときと、保つのに非常に厳しい状態の時もでてきます。

そうした平熱を維持するために、全エネルギーの70%をつかっているのです。

体調が健やかであれば、気の温煦作用とよばれる体を温める作用が適切に働き、外気温が多少低くなっても、高くなっても、健康な平熱を保つことができるでしょう。
暑ければ汗をかいて体温を冷ましますし、寒ければ体表に熱を集め体温を保つのです。
平素、楽々平熱を保つものは、何らかの病をえて体調を崩しても治りやすく、回復が早いようです。勝手に治る体を持っています。ですから海外では風邪やインフルエンザで病院を訪れた人に、薬をださずに安静にと告げて返す処置がなされることがあるといいます。それで治ってしまう体を持っているものが多いから、それで済まされるのです。

ですが気血の失調や停滞から体調が悪化していたり、体質的にひ弱であるとき。平熱を保つことが容易な作業ではなくなります。
こうなるとウイルスに感染しやすかったり、怪我をしてもなかなか治りません。自然治癒を発動させるエネルギーさえ、平熱を維持するために使われてしまうのです。
ぎりぎり平熱を保ち続けてきた均衡が崩れたとき、じりじりと36度台の体温も下がり、低体温の状態に移行するのです。
ぎりぎり平熱を保てている人は回復はしづらい。容易にウイルスが体内の奥へ侵入でき、治療を必要とします。自然治癒頼みにしては、訴訟問題がおきかねません。勝手には治りにくい体になっている人々がいるのです。そうした国に日本がなっていることを認めたほうがいいデータも現れている昨今です。



そして楽々平熱を保てる人の筋肉と、ぎりぎり平熱を保とうと苦戦する人の筋肉。それらは多くのお客様を触れている施術者には、触れた瞬間に、違いを感じ取るものです。




ちなみに、安静時に体温を保つ熱は、55%程度は内臓で生産され、16%が脳、25%が筋肉。この割合からわかるように熱は内臓で生産が多く、必要に応じて筋肉の熱を増して対応しています。ということは内臓が正常に活性し働けば55%程度の熱の生産は容易ですが、内臓の働きが振るわなければ、筋肉などの発熱量を増すことで対応する必要が常時でてしまうことになります。

つまり運動不足は論外ですし飲食するものが冷たいものばかりもNGです。

ただここでひとつ、疑問があります。
世の中には少なからず、先天的に内臓の弱さから55%の安静時の熱を生成できていない人がいます。俗に言うひ弱い体質の者たちです。ひ弱いとは脾(=消化器全般臓器)が弱いものをいいます。


こうした基本の体質は生まれた時点で殆ど決まっています。中医学でも先天の精を指し、父母から受け継いだ生命エネルギーによって、ベースとなる五臓六腑の強さや体質の傾向(あつがり、さむがり、虚弱など)が決まりまってしまうのが常識です。古典『黄帝内経(こうていだいけい)』でも、両親の年齢、健康状態、妊娠中の過ごし方が子供の骨格や臓腑の強弱に直結すると明記されており、中医学では不動の前提です。

​両親から受け継いだ遺伝的な設計図(体質、特定の病気への罹りやすさ)は、生まれた時点で固定されています。これは現代の遺伝学や**エピジェネティクス(遺伝子発現の制御機構)の知見とも完全に一致しています。


健康な遺伝子を父母から受け継いだ者は幸いです。強い五臓六腑は余裕を持って熱を生成してくれます。
対してひ弱く生まれれば、一生涯、変わらぬ体質により、ハンディキャップを抱えて生活を送らねばならない定めです。


小伝馬子さんのYouTube動画に『病人ニート歴10年の私が今伝えたい「病人の賢い生き方」』という映像がありました。小伝さんの、先天的にお腹が弱い体質を背負って生まれでたものが悪いわけじゃないという主張は、私にはこころに強く響きました。そのとおりだと思います。父母も子にひ弱い体を授けようと考えていたわけじゃない。ですがこうした先天的な遺伝上の不利益が元で病気になったなら、責任のいったんは父母にもある。そこを認めてほしいという、叫びです。

それに小伝さんのすばらしさは、親に頼るばかりではなく徹底的な生活にかかる固定費を削減し、お腹にいいという海外の情報を集めて実践し、後天的な努力で先天の不利を補っておられる行動力には頭が下がる思いです。

中医学の考えでは、先天の精と表現した父母からえた遺伝子により決められた病のえやすさや冷え性や暑がりやその他の多くは一度出来上がれば、それは変わることないという認識があります。遺伝子はコピーが繰り返され、同様な情報が保たれます。それが突然コピーミスが起こりだし不安定な状態に置かれれば、長くは生きられない状態に達したということでしょう。そうした認識をベースにして、だったら遺伝子を守りつつ(誇張すれば不老不死)遺伝子で決められた体の弱点を補うための手当をすれば、それでそれなりの健康はかなえられるようになるじゃないか。このやり方のノウハウは養生のようなもので、食や運動、その他、生活の細部にわたり賢明なやり方が伝えられております。なっちゃったもんは仕方ないから、それをそうだと受け止めて、適切な対処をすれば問題なしです。そういったノウハウがあります。
そうした前向きな考え方と行動力は、小伝さんのおこないに、合い通じるところを感じます。






ここで少し話が変わりますが。
興味深い平均体温調査が、1957年になされました。
​これは1957年に東京大学の田坂定孝教授らの研究グループが、10代〜50代の健康な日本人男女3,000人以上を対象に実施した調査です。
この時の測定結果から、日本人の平均体温は 36.89℃(±0.34℃) であると報告されました。現在でも医学界で日本人の平熱の基準としてしばしば引用される有名なデータです。

ただ現代は「低体温化」の傾向があるといわれています。概ね事実でしょう。
​最近は平熱が35℃台の人も多くおられ、現代の日本人の平均体温は当時よりも下がっている(約36.2℃前後、人によっては35℃台)と言われています。
1957年平均体温が36.89度ですから、37度近くですね。35度台の人が37度近くになれば、もう風邪の症状が出ている頃合いです。そして海外の風邪やインフルエンザで病院に行っても静養しなさいといわれて薬を出さない国々の平均体温は、調べれば37度近くか37度を超えていたのです!


子どもの手技を得意とする女性施術者の知人の話では、『20年前の子どもたちと比べれば今の子供達では体温が低下してアレルギー体質の子も増えている。昔の子供たちの体に触れると、たとえ病気がちな子どもでも温かいだけでなく生命力あふれる弾力が感じられました。だから、施術をして様々な刺激を受け止めてくれてよくなっていったのです。ですが今の子供達は冷たくて硬い体の子が増えたと、日々実感しているといいます。こうした子たちは厳しい環境では生き延びるのが難しく感じられるほど弱々しいと感じられるのです。』といいます。



私も手技をしていて初診では問診票を書いていただいてますが、そこに血圧及び体温を書く欄が設けられています。(一時的にプリントミスで体温が抜けてたこともありますが、体温と血圧などのバイタルサインで、施術の効きがいい人かどうかを見分けがだいぶんつくため、指標にしています)



骨格筋の状態が改善されるのが筋膜リリースの真骨頂だとします。
それで五十肩や腰痛肩こりが軽減し、他の様々な不調を緩めることができるからです。
気血津液の過不足や停滞から臓腑が弱り熱を生み出せない方は慢性的な不調を訴える方に多くおられます。その方々に対して手技療法のみで継続的な状態の安定や底上げができるかといえば、難しいでしょう。実際にそれができないかと経絡や内臓マニュピレーション等で徹底して手技応用しましたが、私に限っての話とはなりますが、期待値を越して喜ぶ成果が続いたことは、数えるほどと記憶しております。

そうした方々が、もし先天的な臓器のひ弱い体を父母からいただいてきたとしたら、中医学にはそうしたことを対処する後天の精を持って先天を補う考えのもと、様々な対処法が開発されています。そこに対しての実績は、直接、実験をしている我が身のみの状況です。去年の今頃、仕事納めのつもりで、日々頑張りが過ぎてしまい身体が心まで冷える状態で施術終わりを迎えましたが、その状態はリセットされてきました。生来の脾の弱さから消化吸収が全般、人よりかなり劣りますが、その不調が緩和するプログラムを組んで実施した成果も、この年になってもでてきております。
私自身、平熱が35度後半、脾の弱さから熱を生み出せない人間のひとりです。だから健康体の人の身体って、どういった楽さと落差があるのか、無理やり想像力をたくましくしない限り、実感がもてないのです。ですがそうしたいままでを飲み込んでひっくり返して健康な身体となるよう改善を加えるのがいま。そうした成果が、しっかり裏を取って再現性がでるやり方を見いだせればなと考えているところです。

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虚証と実証、推拿の運用は異なりますか? 

Q.虚証と実証、推拿の運用は異なりますか?

A.はい、異なります。




たとえば、
 睡眠障害 の場合。
虚証と実証では症状が異なります。


虚証夢をよく見る、眠りが浅い、頻脈、物忘れ、目眩、耳鳴り、物思いに沈む、背中の筋肉痛、下肢の疲労

実証頭痛、目眩、肋骨弓下のはり、興奮しやすい、いらいらする、げっぷ、膨満感



これら虚証・実証もあわせて睡眠障害とひと括りにして同じ手技でいいのでしょうか?
症状がだいぶん違っています。

虚証は、気血津液加えて熱が足りてないという状態で、慢性化した虚の状態の延長線上にあります。虚証は気の動きが足らず温煦作用が減って身体(特に内臓)が冷えて寝れない。動と静でいえば静です。

実証は、気血の流れが部分的に強く滞って熱帯びた箇所ができたり、内因により感情の高まりが過剰な熱を生み副交感神経へ移行できない状態。動と静で言えば動です。




こうした相容れない動と静でも寝れないという結果は一緒だというのは、おかしいことでしょう。




虚証であったら気を補う必要があり、実証で無い因による感情の熱なら清熱させて熱を取り去る。
そうして睡眠障害が起きない体温のバランス調整をおこなうことが必要です。

往々にして整体院にくるお客様には虚証による睡眠障害が多いようですが、
少なからず実証と判定されるお客様もおられると考えて、
虚証か実証かを判定してから手技をおこなう必要があります。
実証でも虚証のベースをいささかもっているものもいますから、
虚証と実証の割合を1対1か1対2かといった難しい判断がせまられます。

このように睡眠障害に対応する推拿の手技も、やり方がカスタマイズされ、
効果が高められ確保されてまいりますし、副作用と言えるトラブルも起きなくなります。



残念に思いますがこのような証の差が考慮されず、ごちゃまぜに睡眠障害の症状が列記された施術解説書も少なからずあります。
というか中医学関係に則していた解説書でなければ、それが通常なのかも知れません。
そうした使い分けが中医学の薬膳や方剤などを学ぶと、細心の注意を払いながら証を判定し使い分けをすることがわかります。
私自身、今回、中医学を学ぶ過程で、手技をするときの判定で知識がごちゃまぜになっていた認識の甘さをもっていたと気付かされたことがあります。

というのは。
中医学でおこなう場合分けの徹底は、
そこまで考えないでもいいんじゃないかと素人なら思うことも厳密に差異を分別して差が出た理由を明らかにしていきます。
検討要素が膨大に加算され、そこまで考えなくてもいいんじゃないかと思えるほど。
それを『取り越し苦労、上等!』といってそのなかからこれだと見つけ出します。
すさまじい情熱です。

だから睡眠障害の括りのなかで症状の差異があれば虚証と実証の違いと分別したり、ピタッと腑に落ちるまで分析する過程で背景の原因を探り出したから適切な手の打ち方がわかってくるのです。

私が手技をしてきたとき、こうした中医学の見方をもっと取り入れておればと思うばかりです。
そして同時に、これからの手技では同じ手技をしているよでも、私の脳裏で働く思考過程の違いから完成度の高まりがあらわれれば幸いと感じる次第です。






以下に、そうした中医学の基礎を押さえた手技の推拿療法の本を紹介させていただきます。
虚証と実証のやり方を解説した良書といえるでしょう。


書籍:推拿療法
出版:(GAIA BOOKS)
著者:ウェイジョン・サン, アルネ・カプナー


中国人とドイツ人も関わる推拿療法の本です。
なぜドイツ人が?と思いましたが丁寧な手技写真が使われたわかりやすい本です。


関心ある方は、どうぞ書店で参照なさってくださいませ。


posted by スズキ at 13:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする