2005年07月01日

彼らの日常の所作振る舞い---1

お客様に『薔薇色のイストワール』(著者:養道希彦/出版:講談社)
という本を教えて頂きました。【YAKOさまに感謝】

ナチ占領下のパリを震撼させた舞踏家・原田弘夫の92年を記した本です。

そのなかで舞踏の奥深さ。
そして各優れた技芸や芸術に貫かれる身体操作法の重要さなど、
興味深い内容です。

身体操作方法については、
あまり具体的には描かれていません。
ただ原田がポーズを決めて写真をとられれば、
多くの写真に白い光のブレのようなものがでる。
ポーズした瞬間に舞台上の精神状態に至り、
彼よりほとばしるオーラの光でまともな写真がとれないとカメラマンが不思議がる。
優れた芸術性と精神集中をもつアーティストから発せられる独特な輝きです。

このエピソードからも、
芸術を愛するパリの人々が原田を愛したことを察することができるでしょう。

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話は少し飛びますが、
原田がパリで知り合う旧ロシア王侯貴族達のエピソードにひかれました。

過去、ロシア王侯貴族がソ連より他国へ亡命した。
200万人が亡命。
そのうちの40万人がフランス、
多くはパリに定住しました。

着の身着のままででやってきたため、
タクシーの運転手になったり、掃除婦になったり。
多くは労働者として働いたといいます。

そのロシア貴族たちが密やかに夜会『宮廷の夜会』を行っており、
原田が招待されました。
控えめな照明のマンションの一室。

『原田は、一瞬、目眩を感じた。
人々の振り返り方が、あまりにも美しかったからだ。
年齢もまちまちの男女が、
静かにこちらに顔を向けた、その何気ないしぐさが、
まるで舞踏のようだ。
やさしく、穏やかな視線を投げながらこちらを見つめる姿は、
この人たちの身体運用術の高度さを示していた。

一幅の宮廷絵画のようだ!
原田は目眩に耐えながら、陶然とその美しい絵を見つめた。』

なんという感動的な情景でしょう!

ただ振り返る。
それだけで相手を陶酔させてしまう。
それも名代のアーティストとしてフランスで勲章を得た原田を。
posted by スズキ at 00:00| 以前のコンテンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする