2025年09月19日

漢方薬や生薬、薬膳素材は、誰にとっても安全で安心なのか? 残念ながら、そうでもありません!各人の『体質』によります。



私が漢方薬の知識が浅かったコロナ禍前のとき。
一通りの東洋医学の教科書などを精読したものの、
内容を深く理解するまでにはなっておりませんでした。
私の知識は施術の手技の勉強の合間に時間を割いたものです。
十分な専門性を得られるための1万時間の勉強はかないません。

それもあって施術をしていたときお客様に漢方を勧めるとき、
自分が知っている多少の知識もお伝えすることは一切控えて、
医師または登録販売者である漢方薬局へいくよう勧めました。

今思えば、それが当然のことではありますが、
つい知ったかぶるようなことをしなくてよかったと思います。


漢方薬も体質により、薬にもなれば毒にもなるからです。

たとえば、虚証と実証という分け方があります。
気が足らない気虚という虚証の体質の人に、
実証の気が滞る気滞の対処をすれば間違いです。
気が足らないのであれば気を補うようにします。

たとえば、寒熱での分け方があります。
身体が熱がなくて寒さで震える体質の人に、
更に熱を奪う処方をしたとしたら体調が悪くなります。
この寒熱の寒であれば、熱を補うような処方をします。


薬膳素材でも同様です。
長芋は山薬という生薬名で呼ばれています。
食べてみるとわかりますが、ヌルヌルして、
とても精がつく食材といわれます。
そうしたヌルヌルしている性質から、
食べると湿を補うという効果が期待できます。
ただ食べる人の体質が、
痰湿体質という湿り気が体内に過剰な体質であれば、
多少量を多く山薬をいただけば体調を崩してしまう。


つまり先に漢方薬の処方を受ける前に、
自分の体質がどういった状態であるか。
そこを徹底して理解するようにすべき。
薬効が高い生薬や漢方に手を出すには、
そこをしっかりと知ってから行動することが必要です。

というのも昨今は、昔は医薬品として厳重管理された方剤も、
第二類医薬品としてネット通販でもてにはいってしまうから。
こんなに手軽に買えるなら危険性もないか、
あっても微々たるものだろうと勘違いしてしまうでしょう。


たとえば、乾燥型のアトピーになっている人が、
さらに体の津液を損なうような処方の漢方薬を服用すれば。
想像していただけるとおり、症状は皮膚の乾燥が更に増し、
状態は悪化してしまうでしょう。


他にも、たとえば『破血薬』という、
血瘀となった病理物質を破砕してしまう生薬があります。
これはがんの腫瘍にも効果を示す強い瘀血体質を改善させる効果が期待できるものです。
桃仁、紅花、大黄、三稜、ガジュツなどが『破血薬』です。
こうした『破血薬』は活血薬のなかでももっとも強い効きを示します。
ただすべての『破血薬』は、妊娠中の女性は流産のおそれがでるため
禁忌>です。
不妊症の方は血瘀があれば妊娠しづらいため
血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)という
瘀血体質の方に福音といえる方剤を取ることがあります。
子宮筋腫等の婦人科系のトラブルには血瘀が関与しており、
そちらを血府逐瘀湯により改善させるためです。
ただこの方剤は『破血薬』の<桃仁、紅花>が含まれます。
だから血府逐瘀湯のパッケージをチェックするとき、
破血薬』の<桃仁、紅花>がはいっているとわかり、
破血薬』は「妊娠中は使えない」と知って使うなら問題ありません。
ただそうした注意が一般の方の場合、説明書に書かれていても、
読み飛ばすおそれもあるかと思います。。。
恐ろしいことです。


漢方薬のことを深く知らなかったコロナ禍前の自分は、
西洋医の薬よりかは副作用も少ないからという思いがありました。
当時は自分で漢方薬のお世話になったことがなくて、
体験から知恵を増やすこともなかったものですから。
考え方が知悉であったが、
たまたま効きそうと聞きかじった漢方薬を
ネットで買って服用しなくてほんとによかったと思うばかりです。。。




だからこそ、、、

「 漢方薬を服用するには、
かかりつけ医または登録販売者と相談の上、
用法用量を守りもちいましょう。 」


といった定形の文言のような当然のことが
大事なことだと具体例が想起できるほどにわかるようになりました。


薬剤師より方剤を手渡されるならば、
昨今は服用法や用量などと同時に副作用等の注意書きが書かれた
ペーパーを添付してくれるでしょう。
方剤のリスクが高ければ薬剤師が解説してくれるので
間違いがおこることが防げるでしょう。



ただ反面、自分の体質を詳しく正確に知って必要な方剤がでれば
ネットで保険が効かない漢方薬も手に入るメリットもあるのです。


漢方薬に含まれる生薬の性質を、ひとつひとつ理解できれば、
これは身体を潤す成分が多くて心配がないとか、
これは身体を乾燥させるから、使うにしても頓服としてピンポイントにしようとか。
使い方も勉強が進めばわかってきます。
勉強が進んだら第二類医薬品の漢方薬も
安全かつ有効に利用できるということです。

私自身、
2ヶ月半、
まるまる漢方の方剤の勉強を朝から晩までして、
ようやっと、漢方を自ら取るのも勉強だと考え、
腎陽虚ゆえに八味地黄丸からといった感じです。
中医学は歯を食いしばってがんばってみて、
わかってくると奥が深いし人の見え方が変わってくるのもおもしろいです。
とても自分の生活向上に役立ってくれています。

ただ私のように仕事をやめて時間を作り勉強するのは現実的じゃありません。
やはり十分に信頼の置ける専門家にご相談いただくことで、
まずは心身の不具合を軽減していただくとよいと思います。^^





ここからは余談となります。
経絡の勉強は大いに手技に関連あると
施術をしていた最後の7ヶ月間は痛感していましたが、
中医学独自の内科学が理解できても
施術上の手技がスキルアップするものなのかは疑問でした。


ですが中医学の独特な自然界と一体となった統一感を知り、
人体を理学的な見方も重要ですし、
同時にそれが体内の組織が織りなす諸機能が概観できると、
・物質としての人体
・機能(働き)としての有り様

といった両側面が相互に深く関係している手応えが実感できてきました。


正直に言えば、前者の(・物質としての人体)に、
かつての施術では偏重していたのでしょう。。。
機能や働きをしっかりあたまに入れてシミュレーションできるようになると、
いままでの施術の手数や手法とは違った手技の表現に移っていきます。

先日、つくばの方でお客様に手技をお伝えしたとき。
気・血・津液や五臓の仕組みや働きが
私の頭の中でぐるぐる動き回りだすも、
まだ実際の手技にまでアウトプットできませんでした。
それで以前と同様の手技の用法を伝えさせていただきましたが、
頭では「もうちょっと、できるんじゃないのか?」と声が響きます。

向上する可能性があることは、
ありがたいことと感謝しています。

posted by スズキ at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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