大きな会場で集合研修でおこなわれる指導は、
現状での改善点がどことどことどこにあって、
だったらそれを改めてくださいと机上の空論、
画一的な価値観を押し付けることになります。
ですが取り組むべき課題の事情は、誰もが異なります。
どれひとつとして同じではないため、画一的な指導では帯に短したすきに長し。
どうもしっくりこなくて、研修で得た知識が活かされることがないのです。
こちらの事情も感情も考えもわからないコーチに【現状を変えなさい】と言われても、
すんなり「そうですね。変えましょう」と言う人は稀でしょう。
いままで自身でも独力でがんばってきたことすべてが否定され、
無駄だと烙印を押されてしまう。
無駄は捨てるよう迫られた気分。
そんな嫌な気持ちになれば「やってられねぇ!!」と拒絶されるのは当たり前です。
だから、ちょっとおかしなことに聞こえるかもしれませんが、
【あなたは現状を絶対に変えてはなりません】というのです。
「えっ?変えなくていいんですか・・・」と虚を突かれ絶句。
変えるのではなく、現状のやり方で得た成果を評価して受け止めてほしいのです。
現状を変えて苦心して得た成果を手放しても、現状変更の進行の最中やそれが企画倒れになったとしたら。
そこには大混乱や、苦情の嵐が吹き荒れるでしょう。
そうなったらいままで得られていた成果さえ
手の指の間から砂のようにこぼれ落ちていく。
一旦狂い出した歯車は損失を生み出すのです。
だったら現状は現状は現状で大変によくやってきたと受け入れて、
そのうえ足らないものを調べて、
いままでのやり方に足す努力をするほうが安定した成果がでます。
足らないものがどういったものか共に探索し、
どうやってそれを足すのかを共に考えていく。
そうしたコーチングの考えがあるのです。
私が施術の場で、姿勢や歩き方をお伝えするときにも、
上述したような基本理念を活かしていこうと考えます。
だから、決して
それはだめですとか否定的な言葉を投げかけることはいたしません。
私がかつて身体操作上の指導を受けたときに、
こてんぱんにダメ出しとか可哀想なやつだと
槍玉に上がらされたことがありまして。
いやぁ〜、それこそ言われてることはわかるが、
こちらもこれが精いっぱい、
いっぱいいっぱい。
つらいのなんの。。。
そうした人格否定レベルのダメ出しを食らうという経験から、
それを反面教師として受け止めました。
それ以来、お客様に立ち方等のやり方をおつたえするときに、
「色々と姿勢や歩き方にはやり方があって当然で、どれが正解でもありません。
ただ姿勢等のバリエーションを増やしていくことで、
TPOで使い分けができるとうれしいでしょう」
洋服も冬服や夏服があり、礼服やアロハシャツがある。
靴も革靴もあればサンダルもあります。
オバケのQ太郎のようにお決まりのワンパターンじゃすまされません。
時と場所と機会により最適な衣類を選ぶのと同じように、
姿勢や歩き方にもバリエーションがあるのがふさわしい。
そのように考えられるのです。
それぞれの方々の個性的な立ち方や歩き方は、
その人の生きた証であって貴重な履歴書です。
生きてきた履歴書と言える所作に対し礼を失する言い草はできません。
もしも土足で部屋に踏み込むようなことをしたら、
長期に渡る精神的なトラウマとなることでしょう。
それではバリエーションを学び吸収する気にもならず、
成果をお客様と共有することもかなわなくなるのです。
「腰痛の原因になりづらい立ち姿勢はこういうものがあります」と、
私の知る範囲の姿勢をバリエーションとしてお伝えすることに限られます。
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