『〈小手先の動き〉じゃダメだ、ダメだ!!』
私はそう、一括され続けてきた。
体幹を活用して操作しようと模索したが、
うまくはいかなかった
研究から多少の向上は日々起こるのだが、
根本的なところが抜けていることがある。
体幹から操作する達人の動きを映像や実際に見れば、
自分が見当違いのままであることは明らかです。
たとえば、私はかつて呉氏八極拳の呉連枝老師の映像をみるや、
動きの完成度に驚きほれ込んで、DVDやVCDを中国書店ですべて購入。
時間があれば、しょっちゅうそれら映像を繰り返し視聴していました。
一度、呉連枝老師の講習会へ見学で足を運んだことがあります。
連綿とした身体操作をかなえる緻密かつ大胆にも繊細にも変化する所作。
実際に目の当たりにしたショックで、意識朦朧としながら帰宅しました。
これは20年ほど前のことです。
呉連枝老師の巨大な腕っぷしで、
信じられない爆発力を持って人を吹き飛ばす力も出す。
同時に私にさらさらさらっと筆で色紙を書いてくれたときの
細やかで流々とした筆さばきで見事な字句が綴ることができる。
小手先じゃないから、そうした両面を自在に操ることができる。
そうした呉連枝老師の姿を実際に目の当たりにすることができ、
ほんとうにそれが幸運でした。
『どうやったら小手先の動きから脱することができるのだろうか?』
いまも研究しています。
体感的に小手先の動作と体幹よりおきた動作の違いに気づくことがあります。
小手先の動作で施術をするときには手元がやっぱり気になってるんですよね。
そして体幹を忘れている。
胴体と手の主従関係を取り違えている。
非力感が否めないなか、より力をグイッっと発揮させたいとき。
手先の感覚は失われ呼吸が止まります。
さほど思ったほどの力がだせてません。
この状態で無理な力をお客様にかければ、
悲惨なことになりますから、
そこは自分の力量を判断しながら制御する必要がでてまいります。
当然、パフォーマンスは落ちます。
対して小手先の動作を離れ、理想の操作で施術ができるうようになるとき。
体幹の胸の中心の一点を上下左右前後と安定させる状態を得る。
この一点をわずかに操り、大胆にも繊細にも変化可能に動ける。
手先の柔らかさや緻密な操作、足の運び、腰部の回転が自動制御されだす。
すると小手先の動作ではかなわなかったリリースができてくる。
その感覚は、未熟なものの、なんとなくつかめました。
胸の中心部に設置した一点を精度を高めれば、
バランスを管理しつつわずかにそこを動かせば動作は起きる。
無念無想で物理的な正確さを極めたバランスに注意を向ける。
そうした精度が高まれば高まるほど、そこをほんのわずかに操作すれば、
さらに小手先の動きから遠くなっていく。
それがかなうと米粒に墨絵を描けるほど、
繊細な身体操作までかなえられるようだ。
私の身体内部の感じでは、
ギヤがある自転車を乗るような感じで、
操作上の必要に応じて
ギヤをローに入れたり
ハイに入れて操ることができる。
いま、私の施術が以前より衝撃や負担が少なくリリースが飛躍したのは
小手先の操作から抜けるヒントを得られたことが大きいのです。
施術技術の向上もありますが、年々高度な技術に取り組むこともあるし、
身体操作が向上したところから生み出される施術技術が7割方ですから。
小手先の操作をするしかない者が、
自身の身体理解の限界があります。
そこで発想する手技しかできていなかったが、
『小手先の操作を抜けたあとのお客様の動きは、
本来はこうあるべきだから、そこへ送り届けよう』
そうした視線でお客様の身体を観察して改善点を発見し、
解決方法をチョイスして状態改善の道へと送り届けます。
小手先を使わないというための体幹からの操作が大事だ、
これはいろんな教則動画等を観て語られるも、
実直にそれをしたつもりがどうしてもしっくりこなかった。
だから先師たちは後進者に対し、
『あなたがそこは自分で研究し、発見、習得せよ』とする。
そうした課題を解く楽しみを残してくれたのだと思います。
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