2024年01月13日

心身の動けなさに改善をもたらす!? (ポリヴェーガル理論)



お客様から以前に「ポリヴェーガル理論」についての本をいただきました。
Nさま、ありがとうございます!
お客様がしっかりと読破なさった証拠の付箋紙が30枚ほど貼られていて、
時間をかけて隅々までよく学ばれたのでしょう。

ポリヴェーガル理論は、ざっくりいうと、次のような感じです。
人間の自律神経系には「交感神経」と「副交感神経」のふたつにわかれております。
「交感神経」は、対峙する事態や的に対し戦うか逃げるか。瞳孔を開き心拍数をあげ骨格筋へと激しく血液を送ります。
栄養を大量に消費する事態ですね。
「副交感神経」は、リラックスした状態で消化器の活動がすこやかで消化吸収がなされ、栄養を身体に蓄えられます。
通常は交感神経と副交感神経がバランスを保ちながら活躍することで生命をつないでいるという認識でしょう。
ただポリヴェーガル理論では、交感神経と副交感神経に足すことの副交感神経系に属する迷走神経に着眼しました。
ここでいう迷走神経系では、動きを止めるモードをとります。
本の著者がある動物のドキュメンタリー番組で、まさにポリヴェーガル理論で言う動かなくなった状態を見たといいます。
それは子鹿がライオンに襲われて逃げるとき、交感神経系を優位にさせて全速力で激しく心臓に血を送り、
走って逃げるために必要な筋肉へ栄養を送ります。
ですが俊敏で力強いライオンを振り切ることができないで捕まり首根っこを押さえられてしまいます。
そのときぐったりした状態であるがピクピクと動きがあれば、そのままがぶりっと頸動脈にライオンの牙が突き刺さり絶命するでしょう。
ですが子鹿はライオンに捉えられたときに、死後硬直したときのようにカチカチに硬直。
生きた獲物しか食べることのないライオンは、「こんな異様なやつを食ったら身体がおかしくなる」と本能的に感じたためか、
子鹿をその場に捨ててさります。
ライオンが立ち去った頃に、命拾いした子鹿はむっくりと起き上がり母鹿のもとへ。
子鹿のように自らを動けないようにすることで自分の身を助けるというやり方で命をつなぐ方法があり、
それは副交感神経系から派生した迷走神経の仕組みによりなされるといいます。

子鹿が本能でライオンから逃げるときに使った身体をフリーズさせた。
それは戦うか逃げるかという交感神経モードでもなく、
リラックスした副交感神経モードでもない状態です。
そして人間もライオンに襲われたときの子鹿と同様、心身を動けないようにすることで身を守ります。
それは迷走神経に作用した状態で身体機能を逃げたり戦うでもなくリラックスでもない「無(動けない・動かない・不動)」の状態です。

ポリヴェーガル理論は、そうした不調状態が継続してしまう方々を改善させるためのメソッドも提供してくれています。

今の時代、または今年に入って。甚大な自然災害、飛行機事故、そしてテレビから流れる悪質な犯罪行為の報道。
そして景気動向の先行きの不鮮明さからくる不安。
交感神経を優位にして、逃げたり戦うということもできず、
さりとて副交感神経を優位にしてゆったりする気持ちにもなりづらく感じやすい。
そうしたときには、もうひとつのこころや身体を動かさない状態へと自然に移行しやすくもなるでしょう。
これは一部ではうつのようなこころの状態も当てはまることなのかもしれません。



同書を読んだ知人の考えでは、
こうした迷走神経のトラブルがおきたかのような状態に陥ってしまい抜け出せなくなると、
いざ、自分の身を動かそうとがんばってみたとしても、
身体がどうやっても動けないわけで。
そうなるとこころがあせって空回りするだろし、
そうした状態が長期に続くようなら、
こころも動きを止めて不動となるだろう。
身体の状態とこころの状態は絶妙にリンクしているため
こころが身体の動けなさに付き合うのだろう。
ただこうなってしまうと、なかなかそうした沼から抜け出しづらくなるだろう、とのこと。



もしもこういった不動のモードに自分が陥っているかもしれないと感じたならば、
これはもともとは子鹿のように生き抜くための機能の一つを自分も持っており、
そちらが行き過ぎた動作を示した結果なんだと受け止める視点で再検証してみると良いのかもしれません。
そうした場合には、「ポリヴェーガル理論」の本は、改善方法を紹介してくれています。
その方法には一般の方にもやりやすいものを紹介してくれております。
ちょっと心身の活性をはかりたいと願う方にとっても、
本書は読む価値があるんじゃないかと思った次第です。







ここからは蛇足ですが、
個人的な見方として、
書中では不動になる理由を迷走神経に紐づけておられました。
中医学を勉強しているものとしては、
迷走神経の紐づけは妥当と納得します。
ただ経絡関係でものを見て考えるなら、
腹部側の迷走神経は経絡の任脈、背部側は経絡の督脈に関与していると推測いたします。
任脈や督脈など、それら経脈の気が呼吸の状態が悪化するなどにより滞ることで、
それは自律神経系に関与する器官や組織の働きに停滞等した状態を作り出すことが知られています。
たとえるなら、家に流れる電気の元栓のようなブレーカーをおろして停電状態になり家電製品が働かない状態を起こします。
なのでポリヴェーガル理論での効果的な改善のノウハウ同様に、
任脈や督脈の経絡中の気の流れを正常化させることにより改善されることもあるように思います。

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posted by スズキ at 11:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 施術研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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