単純なことですが、
その人の現状が正確に把握できている深さに施術の手技は直結してきます。
たとえば、どんなに咳に効く高価だがすばらしい薬で珍重される方剤も、
咳には空咳はじめさまざまな要因があっておきるものです。
すると自分の症状がそのお薬の適用外なら効かないんです。
効かないどころか、薬と思っていただいていたものが、毒にさえ変わりかねません。
どのような咳がでているのか分類上正確な判断がつけられておれば、適用する薬を選べます。
中医学では咳は次のような場合分けをしていきます。
(1)外部から侵入するウイルスや細菌を体外へとだす咳
(2)肺に熱がこもったときの咳
(3)胃に湿熱がこもったときの咳
(4)肝臓に熱がこもったときの咳
(5)すでに内部に細菌やウイルスが侵入して定着した後に出る咳
ちなみに(1)が一番対処が容易でその後、順番に対処の難易度が上がり改善に労や時間が長くかかるという傾向をあらわしています。
平たく言えば、軽症から中程度症状へそして重症という具合に並んでおります。
問診や望診、脈診、舌診、あとはお客様の血液検査等の医学的検査をなさられたデータを総合してみていくことで、
この(1)〜(5)のどの咳にあたるのかを判断していきます。
もちろん咳だけの情報は、体全体の像を観るためのジグソーパズルのワンピースにすぎませんが、
そうしたピースを多数集めて、それを組み合わせていくことで、最終的な像が浮かび上がります。
そうしたうえで手を打つのが定石でしょう。
ただ同じ咳という症状のように現れてきますが、
それが(1)〜(5)にわけられたときには、
それぞれ違う漢方薬の方剤を処方されます。
たとえば、
(1)のウイルスの侵入を防ぐための咳に葛根湯をだされてたならばいいでしょうが、
(5)のすでに体内にウイルスが侵入し定着したときの咳で葛根湯ではかえって症状が重くなります。
なので、私どもの手技療法でも、
(1)の場合と(5)の場合では、対処法はわけています。
ここを分けずにおばかな一つ覚えに徹する手技を繰り返せば、
当然のように人体は改善の道ではなく悪化の道に進むリスクが生じるわけです。
ですが私自身、恥をしのんでいいますが、中医学を勉強する前までは、
まさにおバカな一つ覚えに徹した手技だったといわざるをえません。
中医学を勉強する前は、
咳と聞けば(1)か(5)しか認識できていませんでした。
肺・胃・肝臓の熱が上がりすぎて対処しようとするというなどとは西洋医学的なテキストや筋膜リリース上のボディワークなどには語られておらず、
同時に中医学の入門書は以前から目に通していたがそこにもでてきていません。
中医学の専門書レベルの書物を読みこんで自分の知識と判断力を育てることで、
そこに長い時間と労力を投資しなければ得られるものではなかったのでしょう。
私自身、まだまだ研究段階で偉いことを言える者ではありませんし、
診断は医師のみが許されることですから同業者の施術をするときくらいしか、
詳しく話をさせていただく機会もありません。
そして正直、筋膜リリースをするという筋の状態を改善するというだけうたっている私どもに対して、
お客様がここまで内科系のことについて知っていてほしいと期待されてはいないことが普通でしょう。
そうではあっても、やっぱり中医学の勉強したことは施術に役立つんです。
咳は、幾多ある症状のひとつにすぎず、他の症状も中医学で同様に要因を挙げれば複数出てくるものなのです。
ここを単純にだけとらえるか、しっかり専門的な知識を動員してとらえるかで対処の精度が異なるのです。
たとえば、、、
ずっと長いこと「耳鳴り」が改善目標のお客様がおられました。
すでにお医者様にはかかっておられ、
老化からくる耳鳴りですからしかたありません、気になるなら薬を出しますがといわれたとのこと。
ただ耳鳴りになるだろう要件を中医学ではどういうものかということを事前に調べておりますので、
単なる老化ではなく、別の改善しうる要件に手を尽くされたのちにダメであれば老化だというべき。
そう感じてお話を聞いておりました。
上掲させていただいた咳では(1)〜(5)とわけて別々の対処があるのと同じように
耳鳴りの発生要因も幾多あります。
(ただ耳鳴り改善のためには、中医学で得た選択項目のみで対処しきるものではなくて、
ニューロマスキュラ・セラピーといった筋膜リリース用の筋知識をあわせて活用して読みとけるものでした)
耳鳴りは、それは他になんらか含まれた内的症状の存在をしめす「表象」のようなものですから、
そのような表象をあらわす原因になるだろういくつもの部位を緩めてためして確認を繰り返して、
幾多ある選択肢の中から、これとこれとこれが影響しているようだから、そこに注力しようとなるわけです。
内科的な側面からも一部見受けられますが、そこは肋骨を持った胸郭全体の柔軟性と可動域をつけることでカバーしていき、
他の肩甲骨上の棘上筋や肩甲挙筋、斜角筋、胸鎖乳突筋等の首の筋、そして腰背部の深部に入り組んでねじられて隆起した筋など、
かなり毎回にわたって必死にリリースを繰り返してきました。
ここまでは、かなりの時間、お客様に施術にお付き合いいただき感謝いたします。
着々と前進して山を掘削するかのように突き崩せていきました。。
ただ骨盤の腸骨の強い前傾と仙骨の捻じれがかかわっておられるように見受けられていたのですが、
私が持っているベン石の温熱器や各種の今まで持って使いこなしたツールでは、
硬くて深部の深部といったエリアには歯が立たないところです。
で、ここで、登場で大きな前進をかなえてくれたのが「大判の木製かっさボード」です。
前回は脚部大腿部、前面と外側面、鼠径部(主に左側)をかなりの時間をかけて緩めた状態は一ヶ月してもいい感じ。
お客様がご自身、しっかり立ち方をコントロールしてやってきたよとおっしゃられた通りのことが起きており、
サポーター役として二人三脚で改善の道を進んでいる実感を心から感じさせていただける瞬間でした。
うれしいんですよね。
おかげで、大腿部のリリースをせずに、
仙骨部、外旋六筋、腰仙関節の奥内部近くまでのリリースを集中させて解かせていただけました。
お客様の脳に(今回はここ!状態がどうであるか気にかけて!)というメッセージは、
実は全身にまんべんなくかけると、どうしても気を配る点が多くなってメッセージが薄まります。
だからある程度のリリースが進んだ時は、意図してこの部位を徹底して改善しますというように、
エリアを狭めたリリースをしていきたい。
そうした体幹部にかかわり体を支える中心軸を部分的なリリースをするには、
すでにそのお客様が立ち方の要領を得ていて、
頭の中での立ち方のノウハウを得ている点と、
運動神経的にも十分にそうしていく練習が積んでおられる点の2つがそろわないと、
それはすべきではありません。
ですが、そこもクリアできておられまして、
仙骨部と腰背部の深層を集中してリリース。
その結果。
「耳鳴り、止んだ」とのこと。 ^-^)「」
老化じゃなかった!
やりましたね!!
私がここまで粘ってリリースを進められるのも中医学上の経絡学説的な指針を考慮して、
自分勝手すぎる憶測ではなく、一定の人体を知るルールを紐解いていけたところからの自信があってこそ。
ただし今回は大判の木製かっさボードの使い方が、自分なりの施術手法に取り入れられると気づけたから、
耳鳴りの改善まで、内部変化を進められたのです。
診断的な知識があってこそ成果が期待できる半面、
手技療法の技術の力がかみ合わなければ結果にはつながりづらい。
まさにそれは自転車のようであり、
四診とそこからくる状態の判断が前輪でハンドルさばきを進め
手技療法の技術力が後輪で前進する推進力をえることができる。
つくづく、そういったものだと感じました。
ちなみに、大判の木製かっさボードですが、
私の用途ではずり圧のようなねばりつく圧を必要とするため、
木製ですべりがいい状態では筋膜のリリースができるようなつかみが得られません。
それにグリップテープがないとつるつるして持ち手が滑って握りづらいと感じます。
そこで、すべりの良さを捨てて、テニスラケットやゴルフクラブにつかうグリップテープを巻いてみました。
こうすることで持ち手もグリップ力が増してつかみやすくなります。
もし私と同様なずり圧をこちらのボードで掛けてみようという方は、
試しにグリップテープ、巻いて使ってみてください!
私の体感ではこれだけでリリース効率や効果が少なくとも3倍アップしました。
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