そちらに関心をもって本を多読して調べていました。
するとその流れを取り入れ独自に進化発展したチベット医学の存在を、
見て見ぬ振りできないようになってきました。
そうした流れでチベット伝統医学にも関心を持ち始めました。
チベット文化圏に3千年前から伝わる医学体系です。
チベット伝統医学は、世界四大伝統医学のひとつ。
他に、
○ 中国の中医学、
○ インドのアーユルヴェーダ、
○ イスラムのユナニ医学
となります。
チベット医学は日本で手に入る書物や情報は、10冊前後と限られています。
ただ興味深いチベット医学を体系付けられた前身を担ったチベット医学の祖、
第2の薬師仏と称されるユトクという方がおられ、
その伝説が岩波文庫の本になっておりました。
ユトク伝―チベット医学の教えと伝説 (岩波文庫) 文庫 – 2001/4/16
チベット医学の祖,第2の薬師仏と称されるユトクは,8−9世紀の人.
本書は,子孫に伝えられた様々な彼の言行,エピソードを編纂して17世紀に刊行され,
その深い倫理性と宗教性によって,現在もチベット医の座右の書となっている.
ユトクの先祖の話,伝説から,亡くなるまでの出来事が語られるチベットの一大叙事詩.
目次
弟子のコンポ、ユトクに伝記を請う
主バヌマ、天界より来臨す
シェーラブ・レティとイトマの出会い
イトマと聖者バミバ
イトマ、ナーガの国へ
三人の守護尊の指示
王妃の誘拐
天からの植物
薬の種子を蒔く
薬師仏の啓示〔ほか〕
目次をみていただくと登場するイトマという女性は、ユトクの祖先。
叙事詩での登場のとき、イトマは居酒屋の美貌をたたえる娘でした。
本書505ページのうちの25%という長さでイトマが医薬女神へと成長する話が語られています。
医者になる家系ではなかった居酒屋の娘のイトマが医薬への道を極める姿。
感動ですね〜!
人間、為せば成る。
チベット医学では仏教の薬師の仏が信仰されている。
そのような流れに違和感を感じたことがあったが、
この本を読みすすめることで、
「そういうことだったか!」と合点がいきました。
チベット医学も、野草やハーブをもちいて治療をしたり、脈を診るなど、
私が今まで勉強してきた流れに遠くなく、その活用をする物語には親しみも感じられました。
「ユトク伝―チベット医学の教えと伝説」は、話の展開から興味が尽きません。
チベット医学に関心がない方も、物語に引き込まれるでしょう。
現在、政治的な話になりますが「チベット問題」として、
チベットが中国に統治され自決権が剥奪されるという問題があります。
私にはくわしいことはわかりませんが、もしかしたらチベット問題を語るにもチベットで今も息づく彼らの伝統のひとつとして、
チベット医学の祖、ユトクの伝説を知ることを通して彼らの文化や精神性を垣間見る。
そうしたことが大事なことかもしれない。
そのような気持ちになった一冊です。
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