2024年09月03日
ホールドポイント、そしてマスキング・テクニック
筋膜リリースをするとき、術者が心がけると、お客様が幸せになることがあります。
圧を加えることで癒着した筋膜をはがすといった筋膜リリースをするとき。
普通にマッサージのような圧を加えてみても
癒着している2つかそれ以上の筋膜組織の交点に適切な乖離をうながす圧にはなりません。
それは接着材で全面接着された2枚の紙をはがそうとするとき、
どうやってはがすかを考えればわかるでしょう。
貼り付いている2枚の紙を上からゴシゴシこすっても、接着力が増すばかり。
剥がしたいなら端っこのほうにある接着材の塗りがむらになっているところを見つけ出します。
そして両方の紙を指でつまんで遠位に引き離すと
ペリペリペリッと剥がれていくでしょう。
このとき、2枚の紙の一方を動かないよう固定させておき、もう一方を剥がす作業をおこなう。
というのも固定されないまま紙を剥がそうとしてもできませんからね。
これは筋膜リリースでも同様なことがなされております。
2つの筋肉がある部分で筋膜同士が癒着していたときは、
一方の筋肉がうまく骨等に固定されて動かないようなら問題ないのですが、
一方の筋肉を動かすともう一方がついてきてしまうとき。
いくらそんなような具合となる圧をかけても、癒着した筋膜が剥がれはしませんから。。。
圧刺激を受けた部分に一時的な血行を促進させることはあるものの、
それでは筋膜が癒着したままですから。
早々に筋膜癒着部の拘束力により血流や津液の流れが減り、気が滞ります。
そうしたものは筋膜リリースをしたとはいえないと思われます。
なので2枚の紙を両方持って、それぞれを少しずつ慎重にペリペリと剥がすのと同じように、
二本の別々の筋肉を調べて固定して動かなければ、そのまま解けばいいが、
一方の筋肉を動かせばもう一方も動くようなら必ず、どちらか一方を固定するか、両方同時にリリースされるような方向を見定めて引き離しの動きを与えていきます。
こうした固定をホールドといい、そのポイントをホールドポイントというのですが、
意外に凝り方は人それぞれで異なるため、定型のホールドポイントのみを押さえればOKではなく、
臨機応変にその場では2本の筋肉の一つかまたは双方が固定されているかどうか、
固定されていなければどの部分にホールドポイントを設置し、どちらの方向と強さをもってもう一方の筋肉を引き離せばいいのか。
それはそのとき、そのケース、その状況で刻々と変わっていきます。
その変化に対応しながらリリースを加えると解けるんですが、
そこをおざなりにしたら効率的なリリースは起きない仕組みです。
ただ筋膜の癒着した部分は、
極端な劣化が進んだ場合には組織的には干からびた板ゼラチンが体内に埋め込まれているのと遜色ないものです。
そういったものは、本来持つ軟部組織としての柔軟性を失っておりますし、
石のような硬さに化けています。
そうした劣化が進んだ組織は、容易に引きちぎれますし、ちぎれたらもとに戻ることはありません。
なので少しばかり手間をかける工夫が必要となります。
熱したタオルのような加温と湿性あるもので接着部を溶かしてみる。
少しだけ端っこなどに2枚の紙が剥がれそうな部分が発見できたり、
接着剤自体が湿性ある加温で溶かされ剥がれやすい状態になります。
そうした加工を下準備として加えることで、剥がしづらさをカバーすることができます。
それと同じことを体内でおこすような目的で、
ホットストーンのような局部的加熱による筋膜癒着部のリリースを助けることができます。
また、多くは靭帯や腱といった組織が過緊張になることで過剰な牽引を筋肉に課したため、
筋膜が癒着する原因となりますし、
ときには筋膜が弱い癒着でも強固なものであるかのようにみせていたりもいたします。
とにかくリリースに困ったら、関係し関連する腱や靭帯を調査していくと、
その腱や靭帯のリリースで対処できるケースもでてきます。
本格的な筋膜の癒着がみうけられるときでも、
そのようにしたことを下準備としておこなうならリリースのときや施術後の問題が起きづらくなります。
なので実際のところ、筋膜リリースを勉強して実践している先生方の友達にも多くが
オステオパシーの施術方法にわけられる、靭帯性ストレインのリリースを学んで手技に活かしています。
もちろん私もです。
ただお客様にはホールドポイントを押さえられることが不評で、
実際にリリースをする手より、
トリガーポイントなどをチェックされる触手(施術者が指先でアプローチポイントを探る手)や
ホールドポイントの押さえる手が痛いな、
といわれることもあるんですね。
私は触れる程度の50gほどといった1円玉50枚ほど、
持ってみると案外軽いねといわれる程度かそれ以下の接触圧しかかけていません。
ですがお客様の患部に炎症反応がひどいものであれば、それだけで十分な痛覚を呼び起こす刺激となります。
わずらっている側の筋肉を触られたときと、健康な筋肉を触られたとき。
同一な基準圧をかけなければ状態把握が狂いますから、
同じ圧を持って状態をモニターしているにも関わらず、
健康な筋組織を触れられたときは軽いタッチと感じられ、
わずらっている筋組織を触れたら強圧タッチはやめてくれとなります。
多くは2本の癒着が進んだ筋膜を持つ筋肉へ筋膜リリースをかけると、
どちらをホールドして、どちらを乖離動作をしようかと選ぶのですが、
組織が炎症が強いため組織が壊れやすいほうをマスキングして守る選択をすることが多いのです。
というのも栄養失調が長期に加えられた組織はほんとうにすでにもろくなっていますから、
そちらは外圧という本人にとって不測の攻撃を受ければ持たないんですね。
少なからず内部組織的に弱ったものが復活を促進される意味合い以外での、
暴力的な破壊として受け取られて壊れてしまいやすいのです。
なので、そちらの弱った組織を外的な圧から守るようなガードの目的で、
マスキングテープを貼って他からの影響が受けないですむようにします。
・・・で、すでに勘の良い方はお気づきでしょう。
そういったトラブルを持った部分こそほんの弱い圧でも触れられれば痛いんですよね。
お客様には、リリース動作を受けているところよりも、
押さえられているところ(ホールドポイント)がよっぽどいたいから、
そこを触るのはやめてくれ〜といわれるわけです。
気持、よくわかります。。。
私も以下のことを気づいてなければ、ホールドしたりはしないでしょう。
ホールドが必須なリリースではホールドせずに筋肉を動かしても筋膜は剥がれないことを理解できますし、
ホールドしている手は、実質、垂直方向にて弱った組織を固定して外的刺激からそちらを守っている手です。
ある意味、ここがプロの筋膜をリリースなさる施術をする人と、
そうではない方のマッサージを受けるときの差になってきます。
このことを熟慮したお客様から、それでもホールドはNGといわれると、かなりきづいですね〜。
でも、私の身内の施術をしている人には、
「だって、痛いの嫌いなのぉ!!」とにらみをきかせるものがいたり。
なかなかリリースもむずかしいです。^^;