私の両親の墓は香取神宮から歩いて50分ほどの場にあるため、
墓参りのときは必ず香取神宮に参拝し、
香取神宮奥宮から目と鼻の先にある
天真正伝香取神道流の創始者 飯篠家直のお墓参りもするようにしております。
天真正伝香取神道流(てんしんしょうでんかとりしんとうりゅう)は、
室町時代中期に飯篠家直によって創始された武術流儀です。
武神として名高い経津主神を祀る香取神宮の近くに道場を構え、
かつて武勇を競う武芸者が手合わせを願い訪れたといいます。
当時の手合わせは、命を失う、身体が切り刻まれて半身不随。
それが当たり前にあったのですが、飯篠家直は戦わずして勝つ工夫をしていました。
生い茂る熊笹の上にゴザを敷きます。
普通、熊笹が茂っているとは言え人の重さが乗ればどうなるでしょう。
なだれ込むようにゴザごと地面に叩きつけられること必定。
それを軽々と飯篠家直は座して微動だにせず。
訪れた武者修行をする武芸者は一瞬にして常人ならざるものと悟り、
手合わせをせずに帰ったといいます。
まさに飯篠家直が理想とした【兵法とは、平和の法なり】を、
自ら圧倒した力を見せ、戦わずして勝つ兵法を良しとしました。
「真実の武道は人の心にあり、人の道である。
心の中が善であれば、武芸は人を助け世の中を平和にする。
したがって自分自身を完成された人間に近づける努力をしなければならない」
と門人たちに諭し、心身鍛練の術として武士から庶民まで広く教えたとされます。
ただ飯篠家直が不思議な能力を持つ得体のしれないものだから
手合わせを願うものが引いたというのは拙速です。
ただ、こんなのはできるはずがないから作り話だというのも、
自己の既成概念でしかモノが見れない自覚がない者です。
だってそこの熊笹の密生の度合いや、飯篠家直の体重や、
その他多くの様子を存じ上げもせず断言するのは乱暴です。
それでは思い込みがぽっと口に出るタイプの人の証明です。^^
身体の前後のバランス、左右のバランス(水平軸)、上下のバランス(垂直軸)を
極限まで歪曲化した癖を捨てて精妙にあわせられたならば、
小手先での技の繰り出しをする必要もなくなります。
バランスが絶妙に取れた状態のところから、
そのバランスを意図的に操作して動作するときのみ、
まとまりある運動操作がなされます。
これを私は勝手に(素の状態)に還るといってます。
無為に動作すればタフで強靭な、遺伝子が準備した通りの身体力が発揮されます。
身体バランスが精巧に整えられたポジションを筋肉や靭帯、骨格で得られた場合、
自動的に身体は中心部から動きを筋肉を連動連鎖させる形で働き出します。
動きの流れを止めず、呼吸もすこぶる健やかなまま、意のままに身体が操れます。
それが(素の状態)です。
実際に外部から素の状態に近くなるような筋骨格の位置を操作して、
そのものへと動作をさせたとき。
格段なる力が内に秘められていたことに驚かれるでしょう。
別段、無理に筋肉のリミッターを外して身体を壊さなくても、
普通に超人的な力がサクサク繰り出せるでしょう。
後年、剣禅一致の精神として、剣を振るときに禅の修行を並行して行ってきました。
勝海舟が若かりしとき。
本所から王子神社まで歩いて通い、
日々、深夜剣をふるい禅を組む行をしていました。
晩年の勝海舟は『かつて私はそうしていたから身体の丈夫さが続いたんだよ』
といっておられました。
素の状態は肉体の癖やこころの思い込みや精神の壁をなくしていこうとする修行のようなものです。
禅で肉体が素の状態の精度を上げるようにするセンスを最大限に発揮させることと、
それを下地に剣を振ることで物理的な変化をモニターしていく。
そして素の状態をさらに磨き深めていく。
月に数度、洗足池にある勝海舟の墓前で手を合わせるとき、
勝先生はそんなことをなさっていたと、かってながら夢想している次第です。
ただ、私が禅をしても、もともとの体癖によって崩れたものが大量です。
禅をしても、素の状態を取り戻す感覚にはなかなか至りません。
なので、DAISOで買ってきた気泡が入った水平器(水平、垂直、前後がわかる)を工夫して使い、
自分の骨格の位置のズレを丁寧に補正等を試みています。
この体の正確な軸を取り戻すトレーニングは非常に地味な作業です。
ですがこのトレーニングをしてから施術をすると、
施術成果が倍になって跳ね上がります。
これも単純な施術に見えても真似がしづらい秘密のひとつなんです。
稀代の剣聖として名を馳せた飯篠家直に手合わせを申し出た武芸者。
彼らはみすみす切られ役を演じたいわけではなく、
しっかりと修行を積んできたツワモノです。
それゆえ素の状態に至るときの快感を知り、
自分にはそこの段にはまだ先がはるか向こうにあるとわかっていた。
武芸者も立派なもので、真の凄さがわかった。
先に達したと直感するパフォーマンスをした飯篠家直が現れたから、
恐れ入りましたと引くことも恥ではないと退散したのでしょう。
個人的にボディワークにてお客様に対し願うところは、
お客様が素の状態を探索、探求するおもしろさやたのしさに気づく援助がしたい。
手技ではお客様の内部にできた素の状態を遠ざける不必要な状態を改善していく。
そういった素の状態があるのかなぁと興味を持っていただき、
ならば自力で素の状態を高めると同時に、
ちょっと時短を目論んで施術を活用してみようかという方が増えるというのもうれしいですね〜