圧をかけておこなう手技をもちいるとき。
施術初心者にとって、
やりがちな間違いがあります。
独自の指先のセンサーのよさが、筋内に遍在する硬い硬結を見つけだせたとします。
その硬結をどうにか解いて柔らかい軟部組織へと戻したいわけです。
そこでがんばって「ぐいっぐぐぐぃ!!」とスピーディにもみもみ。
直感的に筋繊維が寄り集まって一体化し硬くなった組織を分解するためには、
強烈な振動や高い摩擦熱による熱量をあたえるといいのではと考えたわけです。
そのようにしたくなる気持ちはわかります。
だって、つらいと苦しんでいる人を目の前にしてのことで、
どうにか助けてあげられればと、必死な気持ちになるから。
でも、正直に言えば、
ケースバイケース。
たいていは強圧かつ高速圧をもちいることは不正解。
そうすることは状態を改善する結果を遠ざけるため、
施術をよく学んだものはスピーディにぐいぐいもむようなアプローチはしないんです。
その理由は?
私どもの結合組織がゼラチン質でコロイド形成されたものだから、というのが答えです。
コロイドとは、2種類の物質が混じる際に一方が直径1〜100nm程度の大きさの粒子となって、もう片方に均一に混じる状態のことを指します。
コロイド溶液は、ゆっくりと圧をかければスムースに侵入できるが、すばやい圧をかけると抵抗を受けます。
水に溶かしたコーンスターチというコロイド溶液を例にするとわかりやすいかもしれませんね。
水に溶かしたコーンスターチをかき混ぜるとき、
ゆっくりとかき混ぜるへらをいれるとずぶずぶっって容易に入るんですけど、
すばやくへらをいれようとすると抵抗を感じてやけに入りづらくなります。
そこのしくみはここでは解説を割愛しますがコロイド粒子の動きをミクロの目で観察すれば、納得できるものです。
私たちの体内の結合組織は、こうした水に溶かしたコーンスターチと同様なコロイドにて形成されているため、
ゆっくりとした圧は抵抗をせずに内部へと侵入させるものの、
すばやく与えた圧は抵抗して内部へとその力を通すことを拒みます。
つまりゆっくりした動作でかき混ぜると容易に混ざるんですが、
すばやくへらを動かすと混ぜにくいんですよね。
このような性質を私どもの結合組織がもっているんです。
これはひとつ、大変都合がいいことがあるんです。
自己の身にかかる衝撃を跳ね返す皮膚抵抗を発揮させる元の力ともなり、
すばやく圧をあたえて変化を出そうとしても、
結合組織のコロイドによる身体内部へ侵入しようとする内圧を粘度を上げてはじき飛ばします。
たとえば、野球で球威がファールボールが襲ってきて、肩に当たったとしましょう。
もしコロイド溶液としての抵抗を軟部組織が起こさなかったとしたら、
ダイレクトにボールの威力が骨に浴びせられ、瞬時に砕いてしまうのです。
それが高速のボールが肩の筋肉(軟部組織)に当たればコロイドにより粘度が高まり衝撃を緩和してくれるという、
高速な刺激から身を守る防御力となっているわけです。
すると、もうおわかりだと思いますが、
マッサージをするときに勢いよくぎゅっぎゅっと高速テンポでもんだり圧したりしても、
筋肉等の軟部組織のもつゼラチンのコロイド特性から、内部への圧の侵入を拒まれているのです。
つまり、凝りの部分まで圧が届かないうちい力が失われているため、手技効果は低くなるのです。
私どもでは時と場合により、そのような手技を意図的に使うときがあるのですが、
そこには別の目的がちゃんと潜んでおりますので、
むやみに、そのような効率の悪い圧法はもちいません。
そして超ゆっくり、かつ軽微な圧といえるような質の圧法をもちいることがあります。
お客様にとって、そんな気の抜けたようなやわい圧で効くものですか!?と思うかも。。。
でも、実はそういった圧のほうが皮膚抵抗をすり抜けて、内部の組織へと圧をまんま送れるので、
かえって深部への効きがいい。。。
逆にいえば、外部の表層や中層部の筋層が十分に活性化し正常な状態に戻っていないうちに、
それより奥にある深層に直接的な操作圧を加えて緩めれば問題が起きますので、
それが想定される状況下では意図的に弱い圧を避けるようにしていきます。
ちなみに、表層筋や中層筋が理想化には程遠い状態で、いきなり深層を緩められてしまえばどうなるのか。。。
自然な重力により体の軸が徐々にずれていく状態をカバーするときに、
深層筋の硬化状態を必要に際して創り出すことでゆがんだ状態の骨格につっかえ棒をあたえています。
そうしたつっかえ棒が必要がない状態にまで導くおぜん立てができていれば、そのようなつっかえ棒は無用の長物。
抜き去っていいわけです。
ですが依然としてそのものの運動器系のゆがみを助長する姿勢がとられ、運動のようすも左右や前後に軸ずれをもたらし、
身体の内部にある主要関節のはまりが悪いままの状態で、この深層筋の硬化といったつっかえ棒を抜きとったり軟化させてぐらつかせたら。
そこで人為的にあらたな複雑で解きづらいゆがみパターンを内部につくりだすことになります。
重力線に沿って、徐々にゆがむようなゆがみ方において、それをどう解けばいいのかは、
だいたいのところ見積れます。
つねに9.8Gの上方から鉛直下に向けられた圧が加えられ、
どうその条件ならゆがみを内在させて耐えるかという点を考えていく。
これはこれでけっこうねじれや傾斜やかつてのゆがみ姿勢で得た引き連れの様相など、
筋膜の癒着内部に年輪のように折り重なった癒着の層を読むのは難易度が高いのです。
でも、だいたいのところは、読めてくるところがあります。
ですが表層筋や中層筋を正常化しないうちに深層筋へと皮膚抵抗をすり抜けた圧を加えた圧を人為的に施しすぎると、
もう、それは自然にはくわわることがない圧が様々な状況で複雑に複数入り込んでしまうため、私どもには読めない。
そういったこともあるので、
単純に深層筋をショットガンで狙い撃ちして、そこが解ければOKというものではなくて。
人体を人為的に操作するということは、メリットもあるが、多大なリスクもあると知るべきでしょう。
施術のプロに施術を依頼するという意味は、
十二分にまではセルフマッサージのリスクが見当がつかないときに、
そこを回避してメリット部分を引き出すという危険回避と利益の最大化が同時にできることにあるのでしょう。
ちなみに、そのひとつが、硬化した筋肉の凝りをぐいぐい、ごりごりっと力まかせで圧してしまうことで、
硬化した筋の軟部組織は筋繊維が栄養を受けられず老廃物もたまるごりごりな弱い組織ですから。
そうしたもろくなった筋繊維を、ちょっともんでみてもなかなか緩まないぞと感じて、
もっとさらなる圧で衝撃圧やすばやい圧、強力加圧をすれば筋繊維はぶちぎれてしまうものです。
いちどぶちぎれてしまった筋繊維は、二度とは復活しませんし、
コロイドを優雅に操作して変化を産む圧を加えたわけじゃないから、
代謝が悪化した状態のままだから、、、。
通常、筋トレ等でパンプアップしたときに筋繊維が切れても隣の筋繊維が太さを増して、
代謝の状態を良好なまま対応するという変化とは大違いのことがそこでおきてしまいます。
コリコリになってしまった筋繊維が破壊された状態のまま、近隣の筋繊維も栄養不足でそのまま貧弱な組織。
そういったときには、冷静に考えていただければわかるでしょう。
強圧かつ高速圧は、私どもはお勧めしません。
より詳細にみればコロイドの性質を持った筋の状態は、十人十色です。
重なる基本的な素時としてのコロイドの傾向もありますが、
実際にAさんとBさんの筋への圧の入れ方を比べれば、Aさんはコロイドの粘性が高く、Bさんは低めなど、
体内の血や津液の様子ともからめて条件が違ってきております。
だからAさんへのちょうどいい圧はBさんには不快ということもおこります。
だからふだんづかいの画一化した圧を施すというのは正解ではなく、
それぞれの条件や状態をしっかり読むことができるようになることが大切になっています。
最後に余談ですが、
筋膜リリースガンは、どこどこどこどこっと高速かつ強圧でのセルフメンテがやりやすいものです。
それゆえに、自分のその時々の状態を読んで、それをもちいるよう心がけるといいでしょう。
お客様が購入された筋膜リリースガンを先日もお持ちいただけて見せていただいたのですが、
患部に当たるアダプターが5種類くらいあって、
それらをうまく使い分けるようにすると、エフェクティブな成果が得られるような気がしました。
そこは、もしかしたら購入なさった器具の説明書に詳説されていないかもしれませんので、
ぜひ、適宜、アダプターを変えて使ってみて、実際に試した結果から使い分けをなさるといいでしょう。
2022年04月22日
呼吸の質を面倒見ていくには、横隔膜意識のみでは足りません! 胸郭膜と骨盤隔膜の正常化が鍵に
隔膜とは、立位で観れば上下を隔てる(へだてる)筋肉の層のことをそう呼びます。
地面に対して隔膜は水平・平衡の位置関係になっています。
横隔膜に代表され知られていますね。
横隔膜の上下動により、腹式呼吸がなされることも、ご存知でしょう。
3つ、代表的な隔膜(胸郭膜・横隔膜・骨盤隔膜)などは私どもが関心を寄せて、
お客様のそれら隔膜の状態が健康な動作が可能でよく使われているかどうかをみます。
※ さらに詳細に隔膜をみれば「足底筋膜」や「手掌腱膜」も、隔膜。その状態と動きをみます。
足裏が硬く上下動がなければ、そのものの呼吸の質は悪いとわかります。
概要は、上図のとおり。
息を吸うときと息を吐くとき、横隔膜の上下動をみると吸うときは横隔膜は下がり、吐くときは横隔膜は上がります。
そうすることで肺の内部空間を広げたり狭めることで、空気の代謝をおこします。
でもざっくりと、よい腹式呼吸は、横隔膜が上下動していればそれでOKと思うのでは、足らないのです。
横隔膜の周囲の凝りを解くだけでよしと考えるのは、施術のプロとは呼べません。
なぜかといえば、横隔膜のリリースが必要な状態に陥っている方の場合、
ほぼ100%の確率で骨盤隔膜も改善が必要な状態に陥っているのです。
ここで生体上の動きの起こりをみると、横隔膜には、見過ごしてはならない特徴があります。
腹式呼吸で息を吸うときには、骨盤隔膜(または骨盤底筋とイメージしてください)が動きだしてから、
その骨盤隔膜の動きの量に応じて横隔膜も動き出すのです。
骨盤隔膜が横隔膜の動きを誘発させるような<主従関係>があります。
すると横隔膜がいったん施術による外圧等によるリリースが加えられたとしても、
骨盤隔膜の動きが制限されているなら、ものの10分もせず横隔膜の動きは元の悪化状態に舞い戻るでしょう。
だから骨盤隔膜の状態を解くことが、横隔膜のリリースをするときには必須セットなんです。
そうしないと意味がないどころか、かえって重心どりがやりづらい身体になって苦しみます。
では骨盤隔膜が問題ありのときってどういった場合なのかを見てみようとすると。。。
そうなう場面での数例をあげてみましょう。
・骨盤の傾斜がある、
・外旋六筋の状態が思わしくないため股関節のはまりがよくない、
・鼠径靭帯が硬くて骨盤隔膜が引き連れている、
・腰部や腹部の筋が凝りがある、
・大腰筋に緊張や虚脱がある、
などの状態があれば骨盤底筋が正常な機能ができない状況ですから、
横隔膜も正常に働けない状態にある。
だから骨盤隔膜関連を先行して、または横隔膜を解くのと同時期に解くことが求められます。
そして実際のところ骨盤底筋群のリリースのほうが横隔膜の対処の数十倍もの手間もかかり、
それ以上に技術も飛びぬけて高いものが要求されます。
そして図中に胸郭膜という肺の上にある隔膜が見えると思いますが、
こちらと骨盤隔膜は同時期に呼吸のタイミングで上下動します。
こちらの胸郭膜と骨盤隔膜の両者の隔膜は、互いに連動しているため、
一方が動きがよくなることで他方を機能的に引き上げることもありますが、
見方を変えれば一方が動きが悪すぎれば他方の機能の足を引っ張ります。
つまり肩こりや首凝りがひどく、斜角筋や僧帽筋・肩甲挙筋、その他の胸郭膜周囲の筋に引き連れ等が生じる場合、
この胸郭膜の上下動の制限は骨盤隔膜の上下の量に通じるのです。
つまりめちゃくちゃ首凝りがひどくなってたりむち打ち後遺症があれば、
胸郭膜が理想の30%しか上下動できないほど引き連れていたとします。
すると、、、。
胸郭膜が30%しか動けなければ、そちらの悪影響が骨盤隔膜の可動が30%に制限を受けます。
すると、、、骨盤隔膜の機能低下がダイレクトに横隔膜をまともに動けなくしてしまうのですね。
だから理想で言えば、この3つの隔膜(胸郭膜・横隔膜・骨盤隔膜)を同時期に状態を改善させることで、
その方の呼吸の質を安定的に維持向上させるように変えることができるのです。